定年後とお金、退職金の正しい使い道について考えてみた

「退職金」制度は、サラリーマンにとって、非常に有難い仕組みである。

まず、会社が給料の外で、勝手に積立ててくれるので、浪費家のサラリーマンであっても、とりあえず満額受け取ることができる。

 さらに、これも非常に重要なのだが、税制が非常に有利なものとなっており、手取りベースで数千万円の大金を一度にサラリーマンが受け取ることができるのだ。

 しかし、この有難い「退職金」が果たして有効活用されているかどうかは定かではない。

そこで、「退職金」の正しい使い道について考えてみたい。

 1.退職金の相場

 退職金の正しい使い道を考える前に、まず、サラリーマンはどれくらいの額の退職金を受け取ることができるのか知っておきたい。

 これについては、ちゃんとした統計があるようで、以下のリンク先のりそな銀行のコンテンツによると、「大企業」の「大卒」の平均退職金額は、2,2304千円となっている。(2021年のデータ)

 大企業といってもいろいろあるが、大手金融、大手商社といった高給業界の場合でも、5千万円超ということはなく、3千万円程度ではないかと思われる。

 そうすると、大企業の大卒サラリーマンの場合、23千万円位の退職金を受け取れるというイメージだろうか。

 https://www.resonabank.co.jp/kojin/column/taishoku_unyo/column_0002.html?gaParam=typeA

 2.退職金の正しい使い道

 1)「個人向け国債 変動10年」が答えか?

 各種アンケートの集計結果等を見ると、退職金の使い道としては、預貯金、日常生活費への充当、旅行等の趣味、住宅ローン返済、資産運用のための金融商品購入等が、主な使い道として挙げられている。

 預貯金、金融商品購入は手堅くて悪くない気がするし、定年まで働けた記念として旅行等の趣味に使うのは悪くない気がする。

 他方、「住宅ローンの返済」はやむを得ない出費かも知れないが、「日常生活費への充当」というのは、家計が火の車のように思えて辛い。

 それでは、どういった使い方が適切なのかということであるが、いくつかの有名な個人投資家向けの金融経済評論家やファイナンシャル・プランナーの書籍を読んで見ると、結論的には、「個人向け国債 変動10年」が良いのではないかと私には思えた。

 例えば、大江英樹さんの名著「定年前、しなくていい5つのこと」によると、この「個人向け国債 変動10年」をズバッと推奨している。

 大江さんはその理由として、以下の2点を挙げている。

 1つは、「退職金は余裕資金ではなく、老後の生活をまかなうための大切な資金」だからだ。

現役時代は、毎月、決まった金額が支払われるが、退職するとそれが全く無くなってしまうのだ。この事実に十分向かい合う必要がある。

 確かに、65歳から年金を受け取れるかも知れないが、現役時代の給料よりも遥かに少ないはずで、加えて、ボーナスも無い。家具・家電・車という耐久消費財のための蓄えが必要だし、家のリフォーム等も想定する必要があるし、介護・医療(老人ホームの加入も含めて)のためのまとまったお金が必要になるかも知れない。そういったことを踏まえると、老後の生活資金の一部として、退職金をなるべく減らさずにキープしておくことが必要なのである。その意味で、元本確保である「個人向け国債 変動10年」がお勧めなのである。

 2点目は、将来のインフレ対応の観点から、預貯金では不十分で、インフレ時には多少のタイムラグはあるとしても、金利が物価に連動する「個人向け国債 変動10年」が望ましいということである。

 ちなみに、大江さんのこの考え方に賛同する意見は多く、このダイヤモンド・オンラインの記事においても、「個人向け国債 変動10年」が真っ先に推奨されている。

 https://diamond.jp/articles/-/350047#:~:text=%E9%80%80%E8%81%B7%E9%87%91%E3%81%AE%E4%BD%BF%E3%81%84%E9%81%93%E3%81%AF,%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

 2)退職金のダメな使い道

 退職金の正しい使い道を実践するためには、退職金のダメな使い道も把握し注意することが有用であろう。

 この点、先ほどの大江さんは、絶対にやってはいけないこととして、「退職金投資デビュー」を指摘している。

 なお、ここでのポイントは「退職金」&「投資デビュー」の組み合わせがダメということなので、「退職金」はキープしておいて、別途、バイトや自分のビジネスでの収入を積立投資に振り向けることはダメではない。また、退職前からある程度投資の経験と知識があるような場合は除く。

 なぜ、「退職金投資デビュー」がダメなのかと言うと、それまで投資経験が無いのに、退職金というまとまったお金を手にして投資を始める人は投資を安易に考えがちだからである。

投資というものは、何も勉強しないで成功するほど甘くはないということだ。

 もう一つの理由は、退職というタイミングでようやく投資を始めようという人は、感情の制御ができないということを指摘されている。「株なんて簡単で、下がった時に買って、上がった時に売るだけだ」という人がいるが、多くの人は下がったところで怖くなりうろたえ、売ってしまい、反対に、上がった時には調子に乗って、売る代わりに買い増しをしてしまうのだという。

 そして、何と言っても、退職金をつぎ込んで元本を割ってしまった場合には、今から稼いで取り返すことは非常に難しいということを、大江さんは指摘している。現役時代であれば、頑張って働いて稼いで損を取り戻す気力も時間もあるが、リタイアしてしまうと、いずれもないからである。

 まとめ

 サラリーマンが退職金というまとまった金額を手にすると、何となく強気になって、投資で更に増やそうという欲が出たりするかも知れない。また、金融機関は特別金利という誘惑で、投資初心者に退職金を投資に振り向けようとしていたりする。

 しかし、「退職金は老後の生活資金」ということで、余裕をもって確保するために、定年準備の段階から積立投資等で着実に蓄財をするという方法を私は選択したい。

 SP500を積立投資」というような方向性は頭ではわかっているが、行動に移さないと始まらないので、近々金融機関に足を運んでみようと思っている。