定年後とお金、「定年後に月8万円稼ぐこと」の意義と方法

1.定年時点で十分な貯蓄を達成することは難しい

 定年時点で十分な貯蓄とは、具体的にいくらぐらいなのだろうか?

「老後資金2000万円問題」が騒がれたので、少なくとも2000万円は必要なのかと思いきや、マネー雑誌や金融機関は不安を煽って自分のところに呼びこむのが仕事なので、

2000万円じゃ足りない、3000万円だ」とか、「いや4000万円だ」、なかには「1億円くらいが望ましい」という極端な意見もある。

 本来は、自分の生活水準にあった貯蓄があればいいのだが、定年後とお金については、不安を持つ人は多く、定年時点で十分な貯蓄があると安心している人は少ないのではないだろうか?

 2.定年時の貯蓄不足の不安は、「月8万円」稼げば解消?

 そこで、心強いのは、この大江英樹さんの意見だ。

https://toyokeizai.net/articles/-/168843

 大江英樹さんは、野村證券出身の著名な金融経済の評論家・作家で、著書は数十冊以上に及び、個人投資家とお金の問題を非常に現実的にわかりやすく説明される方である。

私も大江さんの本を5冊以上持っている。

 大江さんのこの記事によると、定年時に十分な貯蓄が無いと不安を感じても、「月8万円」も稼げば、問題は無いということである。 

「お金を働かせる」前に自分が働けばいい

 「定年時の貯蓄をもっと増やさないといけない!」という強迫観念を持つ背景として、

一部の金融機関やFPの「お金を働かせる」という煽りがある。

 確かに、「お金に働いてもらう」というのは魅力的な言葉であるが、十分な原資があれば別だろうが、投資でそんなに簡単に儲かるわけではない。安易なハイリスク投資で、大事な老後資金を大幅に減らすようなことは避けたいところである。

 大江さんの考え方は、「老後に不安があれば老後を無くせばいい」と主張されている。

どういうことかというと、大江さんの「老後」の定義は「働くことを止めた時」から始まるとされている。したがって、老後に不安があるのであれば、働き続ければいいだけの話ということである。 

8万円で足りるのか?

 65歳を過ぎても働き続けることは可能なのか?」という不安があるだろうが、

大江さんは「月8万円」でいいと言っている。さすがに月8万円なら何とかなるだろうという話だ。

 それでは、何故月8万円かと言うと、

平均的な定年後世帯の支出の月平均額と、収入の月平均額の差額(赤字)が、約5万数千円。それに、旅行等の余裕分を2万円程度上乗せして、月8万円という計算である。

 ※本記事の統計は古いが、総務省の家計調査報告と、厚生労働省の平均的な年金受給額に関する統計を参照すれば良い。

 また、月8万円だと年に約100万円になり、わかりやすいという意味もある。

例えば、10年間、月8万円を継続すると、年あたり100万円なので10年間だと1000万円もの効果があると概算できる。

3.月8万円をどうやって稼ぐか?

 バイトで月8万円は意外と楽じゃない?

 大江さんの「月8万円稼げばOK」というのは非常に心強い考え方である。

しかし、定年後の高齢者がバイトで月8万円というのは、思ったほど楽勝じゃないかも知れない。

 もちろん、理数系がめっぽう強い、或いは、海外駐在の経験から英語はネイティブ並みである、といった事情があり、時給34千円クラスの家庭教師でも出来れば楽勝である。

 しかし、そういった特殊技能が無い場合には、普通のバイトとなるが、時給1500円となると、東京でも深夜とか早朝のコンビニ、飲食店系バイトになり、ちょっと面倒くさいかも知れない。もっとも、早起きが得意な人は早朝バイトもアリかも知れないが…

 東京でも、普通に見つかりそうなバイトの時給はせいぜい1200円とすると、月8万円稼ぐには、66.6時間、週当たりだと、16.6時間。

 週2日だと1日8時間強、週3日だと1日5時間強と、それほど楽勝ではない。

2日、1日あたり4時間くらいだとお気楽だが、それだと、半分の4万円にも満たない。 

それでは、どうすればいいか?

 1つの考え方として、配偶者にもちょっと手伝ってもらうという手がある。

配偶者が週に1回程度のバイトをして、月に2万円でも稼いでくれると、かなり楽になる。

 老後に外で働くというのは悪くは無いと思うが、そのあたりの抵抗感は人それぞれなので、

無理な場合もあるかも知れない。

 他の対応法としては、資産収益にちょっとだけ頼るという手もある。

上の「お金に働いてもらう」というのは甘い考え方だ、というのと矛盾するかも知れないが、少額のインカムゲインであれば、無理してリスクを取らなくても可能な場合がある。

 例えば、月に2万円のインカムゲインを得るため、想定利回り4%とすると、600万円原資があればいい。想定利回りを3%としても、約900万円でいい。

もちろん、私の考え方(大江さんの考えでもあるが)は、退職金は無リスク資産(個人向け国債)でキープしておくのが良いということなので、それ以外に原資がある場合である。

 また、別の考え方として、月に8万円というのは参考に過ぎないので、苦痛にならない範囲で働けばいいというのもある。ちょうど気分転換になる範囲で、自分のペースで45万円位なら問題無そうということなら、それでいいと思う。

 他には、情報発信系(アフィリエイト、アドセンス、note等)で稼ぐというのもあるが、そこに到達できる人の割合は1割も無いだろうから、一般的には推奨できない。

 ただ、上記をいろいろ組み合わせれば、無理が無い範囲で月8万円はそこまで難しいとも思われないので、50代のうちから定年準備の一環として、貯蓄、情報発信系の副業へのチャレンジ、家庭教師系の準備等、いろいろやってみればいいのではないだろうか?

 私も、60歳を過ぎて再雇用の状況になれば、副業の制約は特に無いだろうから、お試しに飲食店バイトとかやってみてもいいかなと思っている。合わないと思えば、やめればいいので、そこはそんなに難しく考える必要は無いだろう。