1.「自然に貯まる貯金術」なんてあるのか?
「定年後 お金の悩み」でGoogle検索を掛けると、
りそなグループの「お金のセカンドライフ」というサイトが検索上位にあった。
https://www.resonabank.co.jp/kojin/column/shisan/secondlife60.html
そして、最初の画面を読んでいくと、画面の下の方に「よく読まれている記事」の紹介があり、第3位に「お金が貯まらない方は必見!自然に貯まる貯金術や貯め方ポイント」という、気になるコンテンツを発見した。
https://www.resonabank.co.jp/kojin/column/shisan_kihon/column_0023.html?ranking=footer_link_01
「自然に貯まる貯金術」なんて、惹かれるコピーなのだが、果たしてそんなノウハウが本当にあるのだろうか?
・「貯金(貯蓄)=収入–支出」と考えるとお金が貯まりにくい?!
この記事は、この見出しから始まっている。
まず、「貯金」の横にわざわざカッコ書きで「貯蓄」とある。
「貯金」と「貯蓄」とは何が違うのか?
ここで引っ掛かってしまったのでググって見ると、
貯金は貯める対象が「現金」に限られるが、貯蓄は現金以外に株式、債券、積立型生保といった金融資産を広く投資対象とするらしい。便利だから、今後、私も使っていきたい。
話は逸れたが、「貯金(貯蓄)=収入―支出」が何故ダメなのかピンと来ない。
記事を読むと、貯金(貯蓄)の金額が支出の後に、「事後的」に決まるのが気に食わないらしい。
では、どうすれば良いかというと、次に書かれている。
・お金が貯まる人は「支出=収入ー貯金(貯蓄)」と考える
これだと何が違うのかというと、貯金(貯蓄)を「事前」に差し引いて、残った金額の範囲で支出を行うので、真っ先に貯金(貯蓄)を確保できるから望ましいのだそうだ。
まあ、消費性向が高い、浪費癖のある人が自然に行動すると、支出優先になるため、月末には貯金(貯蓄)するお金が残らない。だから、浪費をしてしまう前に、予め貯金(貯蓄)額をキープして、その分は最初から無いものと考え、残った範囲で消費しなさいということなのか。
さらに、「支出=収入―貯金(貯蓄)」、要するに、「給料日には真っ先に『貯金(貯蓄)』額をキープせよ」に加えて、もう1つ、留意点が書かれている。
・お金を分ける
これは、給料日に貯金(貯蓄)相当額をキープしたつもりでも、同じ銀行口座に入ったままであれば、誘惑に負けて途中で使ってしまうことを危惧したものである。
そこで、途中で欲望のままに貯金(貯蓄)が使われてしまわない様に、普段お財布代わりに使う普通預金口座から離しておきましょう、ということである。
それでは、どうすれば良いかというと、
「定期預金」を活用する、或いは、「積立投資」を活用する
ということである。
別の普通預金口座に振り込むという手もあるが、普通預金だとキャッシュカードですぐに引き出すことができるので、浪費家の人は、これでは不十分ということらしい。
定期預金も積立投資も途中で引き出したり、現金化も可能なのだが、その手間や心理的な抵抗感が普通預金より強いので、貯金(貯蓄)は貯めるのに適しているということだ。
「自然に貯まる貯金術」なんて、大風呂敷を拡げたコピーだが、結局ポイントは2点。
(i)給料日に貯金(貯蓄)額を切り分ける
(ii)切り分けたお金を定期預金か積立投資に振り向ける
別にどうってことは無い、これだけの話である。
2.積立をするときのポイント、気をつけたいこと
「自然に貯まる貯金術」を遂行するにあたってのポイント、注意点が、この記事では続いて紹介されている。
最初のポイントは「欲張り過ぎない」ということである。
無理をして、厳しめの貯金(貯蓄)をしようとすると、途中でストレスが溜まってしまい、挫折するリスクが高いからであろう。
このあたりは、ダイエットとか語学学習などと同じで、焦って急いでやろうとしても長続きしないので、長期的視点でコツコツ始めるのがいいということだろう。
人間の行動パターン、生活習慣は急には変えにくいものなので、現実的なアドバイスだと思う。
2つ目のポイントは「目的・目標をイメージする」である。
これは、貯金(貯蓄)を継続するためのモチベーション作りであろう。
具体的には、こういったものが挙げられている。
・海外旅行の資金として、1年後に○○万円貯める
・マイホームの頭金として、5年後に●●万円を貯める
・老後資金として、30年後に○○○万円を貯める
このブログでは、老後資金をどうするかがメインテーマなので、老後資金として○○○万円を貯めるというのが目標になるのであろうか?もっとも、50代の定年準備の一環としての貯金(貯蓄)の場合、「30年」というような長期目標は持てないのであるが…
3つ目のポイントとして「目的に応じた商品を選ぶ」
例えば、1年後の海外旅行目標であれば、短期間なので投資の複利効果は大して期待できず、流動性が重視されるので、定期預金の積立が良いが、老後資金の様に長期的な資産形成ということであれば「投資信託」によって積立投資をしなさい、ということである。
まあ、銀行のコンテンツなので、儲からない定期預金ではなく、長期的なものは、投信で積立投資を始めましょうというだけの話である。
3.果たして、この方法で「自然に貯まる」のか?
果たして、りそな銀行推奨のこの方法でお金は「自然に貯まる」のだろうか?
ある程度真面目で、コツコツと貯金(貯蓄)をしている人は「なるほど」と思ってくれるだろう。
しかし、問題は、消費性向が高く、必要だとわかっていても貯金が出来ない人達である。
そういう人達に、「支出=収入ー貯金(貯蓄)」というような、回りくどく、小難しいことを言ってもダメだろう。
何故なら、貯金(貯蓄)が出来ない人は、頭ではわかっていても、行動できない人達だからである。
「今から毎月3万円」、とりあえず、積立投資を始めてみる!
お金が貯められない人は、シンプルに行動するしかないだろう。
毎月の適性貯金(貯蓄)額はいくらか、とか、「投資対象はオルカンかSP500のどっちがいいか?」とか、「NISAはどうやるんだっけ?」とか、そんなことを考えていても行動が送れるだけで、できないまま終わる。
そこで、何も考えずに、まずは「3万円」から始めるのがいいだろう。
さすがに3万円であれば、50代のサラリーマンにとって、「欲張り過ぎ」というレベルの金額ではないだろう。また、貯金が出来ていない人は節約とか真面目にやっていないことが多いだろうから、携帯代金と生命保険を見直せば、それだけで3万円近くは浮かせることも可能ではないだろうか?節約で月に1万円でも浮かせることができると、あと少しだし、ボーナスを原資の一部に使ってもいいのである。節約とボーナスの使途を見直せば、毎月3万円ではなく、5万円でも行けるかも知れない。
それに、50代で十分な貯金ができていないのであれば、老後がヤバいので、お金を貯めるモチベーションは当然高いだろう。
そして、投資期間は10年程度の長期的な視点は持てるので、投信を使って積立をするのは適していると言えるだろう。
毎月3万円の積立投資を50代から始めても、それなりの効果はある
「今更、3万円位積立たところで、大した効果は無いんじゃないか?」という疑問を持つかも知れない。
しかし、毎月3万円でも、仮に年に5%で運用できたと想定した場合、5年後には、
204万円になる。
そして、10年後であれば、
466万円になる。
さらに、15年後となれば、
802万円となる。
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/tsumitate-simulator/
もちろん、「老後資金2000万円」には到達できないが、これだけあると随分ましだろう。
足りないと思えば、軌道に乗ったと思えるタイミングで積立金額を5万円位に増やせばいいのだ。
それと、毎月3万円でも積立を始めると、支出面を気にするようになるだろうから、節約に対する意識が高まり、浪費が抑制されるという副次的な効果も期待できる。
そして、何と言っても、サラリーマンの場合は、退職金があるので、老後資金のコアとなる部分は退職金でかなりの部分をカバーできるだろう。大企業であれば、退職金の相場は2000万円クラスであるので、これぐらいの積立が加わると、十分「老後資金2000万円」はクリアできるのではないだろうか?
そういうわけで、50代に突入したサラリーマンは、今から月に3万円程度の積立を始めれば、退職時には老後資金が足りずに手遅れ、というような事態には陥らないだろう。