定年準備の段階で、相続で3千万円が手に入った場合、どう使うか?

定年準備を開始するタイミングは、50代が多いと思われるが、50代と言うと、相続が発生する頃でもある。近年の株や不動産価格の高騰によって、思っていたよりも多額の資産を相続できるというケースも増えている様だ。 

例えば、3千万円を相続した場合、どのような使い方をするか?

 退職金の使途としては、基本は手堅く元本確保のもので、「個人国債変動10年」あたりがいいのではと言えるかも知れない。

 他方、相続で得た資産については、もう少しいろいろな使途があり得るだろう。 

  1. 投資する(主としてキャピタルゲイン狙い)
  2. 投資する(主としてインカムゲイン狙い)
  3. 預貯金/個人向け国債(元本確保)
  4. ローンの返済
  5. 消費

 これらは5択というわけではなく、実際はこれらの組み合わせも多いのではないか?

例えば、キャピタルゲイン狙いの投資に1500万(無分配型の投資信託等)とインカムゲイン狙いの投資に1500万(例えば、高配当型の株式投信や外国債券等)と半々とか、9割の2700万は手堅く預貯金にするが、1割の300万円は消費に回そう、といった具合である。 

最初に考えるのはローンの返済をどうするか?

 このあたりは人それぞれだろうが、それなりの額のローン残高がある場合には、

大事な相続で得た資産を消費に回したり、ハイリスクな投資に振り向けるというのは不健全かも知れない。

 もっとも、理屈の上では、ローンの金利よりも投資の期待リターンの方が高ければ投資に回した方がいいという考えもあるが、それはあくまでも「期待」リターンであって、リスクも伴うので、そのあたりは慎重に考えた方がいいのではないだろうか?

 心理的にもローン残高をある程度減らせると、その分ほっとした気分になるかも知れないが、ローンの返済額が減った分を投資や貯蓄に振り向けるのではなく、消費に使ってしまうのは勿体ない話である。このあたりは、定年後の生活を見据えて、計画的に使途を考えたいものである。 

教育費、リフォーム代等の高額な支出をどうするか?

 ローン残高の対応の次に考えるとしたら、教育費や家のリフォーム代といった高額な支出をどうするかかも知れない。

 相続によって、まとまったお金が入って来たので、教育費やリフォーム代の予算の増額を考えたりするかも知れないが、ここでも定年後の老後資金とのバランスを考えることが重要であろう。

 教育費やリフォーム代に使うのであれば、元本と流動性を確保するため、そこは預貯金でキープすることになろう。 

ローン返済、消費の額が決まると、残りは投資資金となるか?

 ローンの返済額と、消費に回す金額が決まると、残りは投資資金とすることが可能である。

定年後を見据えて老後資金の積立投資をしているのであれば、それと同じ要領で投資をすればよい。例えば、SP500に積立投資をしているのであれば、同じ様にSP500に一気に投資をすれば良い。

 とは言え、ローン返済額と支出を控除した、相続で得られた資金の残代金が結構ある場合には、今も楽しむために、インカムゲインを主眼とした投資もしてみたいという誘惑にかられるかも知れない。

 例えば、相続資産が3千万円あり、ローンの返済と商品に1千万円を使うと決め、2千万円が残ったとする。この場合、老後資金の形成を重視するのであれば、この2千万円をS&P500につぎ込めばいい。しかし、半分の1千万円をインカムゲインを主眼に考えて、高配当型の日経平均ファンドとか、外国債券に投資をするという選択肢もある。

 その場合、例えば、年に4%の分配金や利子が得られるのであれば、年あたり額面で40万円、手取りで約32万円のインカムゲインを手にする可能性がある。そうすると、月に26千円強、お小遣い的なものが得られる可能性がある。

 もちろん、インカムゲイン狙いで投資を考える場合にも、その元本部分についても吟味する必要がある。上記の例だと、日本株の見通しとか、外国為替に関する見通し、他の資産とのバランス等を考慮して意思決定をすべきである。 

私なら、ある程度はインカムゲイン狙いの投資にも振り向けたい気がする

 これは、退職金の予定額や、今ある貯金額等にもよるのだが、

そこそこ余裕があれば、ある程度はインカムゲイン狙いの投資に振り向けてみるのも悪くない気がする。

 何故かというと、老後資金を長期的に考えることは重要であるが、節約を意識し過ぎるとストレスが貯まりがちになるし、今を重視するという考えも大切だからである。

 月数万円のお小遣いが出来ると、いろいろな楽しみ方があるだろう。

老後の娯楽、例えば、読書、B級グルメ、ご近所鉄道旅行といったものであれば、低予算で楽しむことが出来るので、月数万円でも増えるとかなり幅は拡がると思う。

 なお、50代になると、相続というと自分だけでなく、配偶者にも生じる時期である。

配偶者が結構な資産を相続した場合、家計が随分助けてもらえる可能性がある。

(その分、配偶者に頭が上がらなくなるリスクはあるが…)

 いずれにせよ、相続は退職金と同様に、定年後の老後資金において大切なお金であるのは間違いないので、計画的に大事に使いたいものである。