定年後の「お金の不安」の原因について考えてみる

定年後に「お金の不安」が全くない人はいるだろうか?

 よほどの金融資産や不動産でも無い限り、サラリーマンは誰でも、多かれ少なかれ、「お金の不安」はあるだろう。これには、「お金の不安」を煽った方が自分のビジネスに繋がるからか、メディアや金融機関が老後のお金の不安をさんざん煽っているので、そう感じるところもある。

 しかし、定年前後に大学とか企業の同期会をやると、もっとも盛り上がる話題が「お金の話」ということなので、実際、定年後のお金の不安については、誰でもが感じるところであろう。 

しかし、「お金の不安の原因は何か?」と聞くと、意外と明確な答えは出てこない?

 サラリーマンは誰でも、定年後のお金に不安があるというのはわかった。

しかし、「定年後に『お金の不安』があるのは何故ですか?」と聞くと、その回答は人によって違ったり、明瞭な回答がされなかったりするのではないか?

 それは、誰もが定年後に漠然とした「お金の不安」を感じるが、そこから踏み込んで「お金の不安」の原因を究明し、対策を練ろうとする人が少ないということだろう。

 この点、昨日ウェブで発見したこの記事が、この現象について面白い説明の仕方をしている。

https://blog.sonybank.jp/2024/03/sonybank0318.html 

この記事によると、「お金の不安」は「お化け屋敷」に例えることができるという。お化け屋敷は、真っ暗な中、いつ、どこで、どんなお化けが出て来るかわからないから怖いのだという。しかし、予め、どのタイミングで、どんなお化けがどこで出て来るのかを聞かされていると、お化け屋敷の怖さは無くなってしまう。 

定年後の「お金の不安」も同じで、定年の前後にどういった事象が発生し、それによってどういった問題点が生じるのかを予め理解していると、その不安もかなりの部分が解消されるだろうということである。 

定年後の「お金の不安」の原因を探ろうとしない人が多い理由

 定年後の「お金の不安」の原因、すなわち、定年前後に生じる事象について調べればいいのだが、それを実行する人は必ずしも多くないだろう。

 その原因は、定年前後に生じるお金に関する事象について、無意識的に目を背けようとしているか、或いは、意識していても敢えて避けようとしているからではないだろうか?

 これは、他にもある話で、ダイエットをしないとヤバイと感じつつも体重計に乗るのを先送りしたり、或いは、体調に問題を感じつつ健康診断を避けようとすることと似ていると思われる。

 必要と感じながらも先送りしようとするのは、その真実を認識してしまうと、それを解決するために、「嫌なこと」「やりたくないこと」が生じるからだろう。

 例えば、ダイエットの例だと、実際の体重を知ってしまうと、そのための運動をしたり、食事制限といった、「やりたくないこと」が生じることである。

 定年後の「お金の不安」の問題については、その原因を知ってしまうと、面倒で分かりづらく、そして、損をするリスクのある「資産運用」の勉強をする必要に迫られたり、また、貯蓄の原資を捻出するために辛い「節約」生活を余儀なくされるからである。

 しかし、定年後の「お金の不安」の問題については、健康の問題と同様に目を背けては行けない大切な問題であり、それを解決するために「嫌なこと」に直面するかも知れないが、今それをやっておかないと、定年後にはもっと厳しい「嫌なこと」を回避できなくなってしまうおそれがある。 

定年後の「お金の不安」の原因:定年前後の「収入ダウン」の問題

 定年後の「お金の不安」について、あまり考えたくない事象として、定年前後の「収入ダウン」の問題が挙げられる。

 まず、定年「前」の収入ダウンは、役職定年であろう。

50代半ばから後半に、役職定年が来る。役職定年になると、年収の23割が削られてしまうことが多いという。

 その次に来る収入ダウンは、「正社員」としての定年で、ほとんどの会社の定年は60歳では無いだろうか?正社員としての定年を迎えると、再雇用となるが、その場合は年収は約半分、ひどい場合には約1/3になってしまうところもあるという。約八割のサラリーマンが、とりあえずは再雇用を選択するらしいので、大半のサラリーマンは60歳時点の再雇用の段階で、2度目の収入ダウンに直面する。

 そして、まだこれで終わりではない。

再雇用期間も多くの場合、65歳で終了となるので、そうなると年金生活である。

サラリーマンの場合、企業年金等が恵まれている会社の場合でも、月収レベルは月30万円程度であろう。そうなると、再雇用時代の月収よりも、更に収入は低下する。

 定年の前後にこれだけ収入ダウンがあるというのは、考えると暗くなるので、目を背けたくなる気持ちはわかる。ただ、これは意識したくないだけであって、各自が理解している問題であろう。

 しかし、重要なのは、収入ダウンの先にある、「準備するべき老後資金の金額」ではないだろうか? 

「準備するべき老後資金の金額」は具体的にいくらか?

 目を背けたいが、役職定年⇒再雇用⇒年金生活、と収入ダウンに直面することは誰でも知っている。

 しかし、この収入ダウンに起因する、「準備するべき老後資金の金額」がいくらかについては、実際にわからないサラリーマンも結構いるのではないだろうか?

 一般的に、「老後資金2千万円問題」とかが知られているので、結構な金額が必要なのではないかと薄々気付いているかも知れないが、その金額は当然、人、家庭によって様々である。

 この「準備するべき老後資金の金額」については、FPがやるようなキャッシュフロー表を使った試算のように、丁寧にやると算出するのは結構面倒である。

 そこで、上で引用した記事で紹介されている概算方法、「老後資金の目安」がわかりやすい。

その計算方法は、以下の通りである。 

「毎年の予想赤字金額×老後年数(90歳までの年数)」+「特別支出(数年に一回の支出)」

 これは、例えば、65歳の年金生活突入時から90歳までの25年間、毎月15万円不足しそうだと感じると、15万円(月)×12か月×25年間=4500万円。

 それと、「特別支出」は、住宅の修繕費用、自動車の買い替え費用、耐久消費財の買い替え費用、病気等に係る費用の合計である。仮に1500万円と見積もると、先ほどの生活費の補填分4500万円と合わせると、6000万円となる。

 しかし、サラリーマンの場合、退職金がある。

それと、相続もあるだろうし、浪費家でなければ貯金がゼロということも無いだろう。

退職金、相続、それまでの貯金を合わせて3000万円あるとすれば、「準備するべき老後資金の金額」は「3000万円」ということになる。

 3000万円も無理だよ」と思われるかも知れないが、悲観的になる必要は無い。

何故なら、上記の試算は概算であって、調整・吟味をすると減らすことは可能である。

 例えば、65歳から90歳まで一律に月15万円が不足と置いたが、80歳を過ぎると行動範囲も狭まり、徐々に支出は減らせる余地はあるし、臨時出費も適当に1500万円と想定しているからだ。

 更に、これが大事なのだが、50代であれば今からでも頑張って、1千万円以上は「老後資金」を蓄積すべきだからだ。 

必要な老後資金の問題は、どうせ逃げられないなら、早めに始めた方が良い

 何となく目を背けたくなる、老後資金の蓄積問題であるが、やってみると、それはそこまで苦痛を伴う問題ではないのではないか?

 目を背けたくなるのは、苦しい「節約」をしたくないということであろうが、月に数万円レベルの節約の遂行で全然違ってくる。何故なら、その効果というか、節約習慣は90歳まで有効だからだ。

 そして、節約で浮いた分を老後資金のための資産形成に振り向けることが出来るので、節約は一石二鳥なのである。

 定年を意識する年代(50代?)までサラリーマンを続けているということは、それだけ忍耐力や継続力はあるわけなので、月数万円レベルから始める節約はそんなに難しいことではないだろう。厳しいダイエットより、苦痛は少ない感じがするが、どうだろうか?

 また、対応策は節約だけでなく、収入を増やすという手もある。

具体的には、副業レベルで数万円稼ぐことが出来れば全然違って来る。役職定年を迎えると、あくせく働くプレッシャーは減るし、再雇用となると堂々と副業が出来るし、時間的余裕もできる。ネット系の副業にはスキルが要るから難しいというのであれば、現業系のバイトで自分に合うものを見つけるというのもいいだろう。

 月数万円レベルでも、お金を稼げる方法を見つけると、これは単に経済的な問題解決だけではなく、定年後の「居場所」の問題解決にもつながるものである。 

結論:定年後のお金の不安の原因は、早く見つけて、手を打った方がいい

 以上のように、定年後のお金の不安の原因については、その対応法は、必ずしも苦痛を伴うものではないし、むしろ、前向きな一面もある。

 どっちみち、健康とお金の問題から逃れることは出来ないので、早めに動いた方がいいだろう。