最近、50代での早期退職と、そのための経済的な対応に興味がある
私は50代のサラリーマンであり、定年後に向けた準備をしているところである。
私は60歳までは正社員として働くつもりであるが、何故か、60歳の定年前の早期退職とその生活について非常に興味がある。仕事が大変になって早く辞めたくなったというわけではないのだが…
そこで、YouTubeを物色していると、ちょうど、57歳で早期退職したサラリーマンの60歳までの3年間について語った動画を発見したので紹介したい。
https://www.youtube.com/watch?v=KDKIp1fU6PA
この動画の主人公は「山ちゃん」というので、私もこの「山ちゃん」という呼び名を使わせていただくこととする。
結論的には、山ちゃんのケースは非常に興味深く、いろいろと考えさせられることがあった。やはり、本で見た情報と、実際に経験した人の話とではリアリティが全く異なるからである。
電機メーカー勤務の山ちゃんが57歳で早期退職をしようと考えた経緯
山ちゃんは56歳の時に、1年後、57歳の年に早期退職をしようと決意する。その理由は、高校を出て39年間働き続けてきて、心身ともに疲れたからだと言う。会社の業績悪化に伴い社内の人間関係もギスギスするようになり、仕事内容も単純作業の繰り返しで働き甲斐が失われたそうである。
もちろん、定年前に早期退職で無職・無収入になることは、経済的・社会的な意味で簡単に踏み切れなかったようだが、家族ともじっくりと話し合った結果、奥さんを中心に前向きに背中を押してくれたのだという。
早期退職時における経済的な状況
山ちゃんが57歳の時に早期退職に踏み切った際、退職金が1800万円、貯蓄が800万円、普通預金?が夫婦それぞれ200万円ずつ、合計3000万円の金融資産があった。
そして、これが重要なのだが、住宅ローンは既に完済していて、負債も住居費ともにゼロであった。
ただ、山ちゃんの場合、アルバイトも個人事業も一切行わない完全な無職であったし、奥さんの収入も(動画では明言されていないが)無さそうであった。
早期退職して、やりたかったこと
50代後半になり、心身ともに疲れて、そろそろ辞めたいと思っても、経済的・社会的な面でなかなか踏み切れないサラリーマンは多いと思う。それでも、思い切って早期退職を実行できる人というのは、何かやりたいことがあるのだろう。
山ちゃんは、多趣味な人で、プラモデル作り、アマチュア無線、釣り、野球観戦が好きで、早期退職によって自由になると、思う存分、こういった趣味を楽しみたいという思いがあった。
また、山ちゃんは家族との関係も良好な様で、既に独立している息子さんや娘さんと会う時間が増えるというのも、嬉しいことである。特に、娘さんには子供がいるので、時々、お孫さんと会えるのは大きな楽しみだそうだ。
このように、山ちゃんの場合は、他にやりたい「仕事」は無くても、趣味や家族との交流を十分楽しめるという背景があった。
家計のやりくりについて
山ちゃんの場合、完全に無職になるし、また、57歳なので年金の繰上げ受給も出来ない。このため、生活は金融資産からの取り崩しとなる。
山ちゃんは、3000万円というそれなりの金融資産はあるものの、60歳の年金繰上げ受給まで3年もあるので、その間、貯金が減り続けるのはプレッシャーとなる。
そこで、山ちゃんは家計の見直しを行い、何と生活費をサラリーマン時代の6割にまで削減することに成功した。具体的には、夫婦二人の生活費を月間20万円にまで削減できたのである。
【山ちゃんの生活費:40%の削減成功後】
- 食費 6万円
- 水道光熱費 3万円
- ガソリン代・通信費 3万円
- 保険代 2万円
- 固定資産税 1万円
- その他 5万円(趣味代2万円含む)
- 合計 20万円
ポイントとしては、外食費を削減し自炊にすることにした。山ちゃんはプラモデルが趣味で器用なのか、料理に積極的に参加し、奥様とも仲良く自炊を楽しんでいるという。
また、光熱費も無駄が無いよう、こまめに電気を消したり、お風呂も2人続けて入る等、光熱費節約の意識を高めたという。
それから、退職して時間があるので、食費もいろいろ工夫して、スーパーで見切り品を安く買うなど、夫婦揃って楽しんで節約に取り組んでいるという。
さらに、早期退職によってストレスが無くなり、ウォーキング等の運動や健康を全体的に意識するようになったので、非常に健康になり、年間の医療費が10万円から2万円にまで減ったのも大きいという。
生活費を40%も削減するのは、本来であればかなりストレスを伴いそうであるが、山ちゃんの場合、節約をゲーム感覚で楽しんでいるという点が大きい。まさに、節約名人のレベルであり、奥様と協働できている点もポイントであろう。夫婦の片方が節約に熱心であっても、もう片方がストレスを感じてしまうと、結局行き詰ってしまうからである。
また、山ちゃんのセンスがいいのは、趣味に使うお金が月間2万円というのは減らしていないそうだ。趣味を好きなようにやれなくなると、早期退職によって得た自由を享受できないというのが理由だ。このように、上手くストレスを溜めないように節約を実行できるのは、大したものだと思う。
結局、山ちゃんの場合、57歳での早期退職から、60歳で年金を繰上げ受給するまでの、無職・無収入の3年間で取り崩した貯金の合計額は800万円である。当初の貯金3000万円は2200万円に減ったが、本人はまだ十分に残っているとの認識である。
月々の生活費が20万円だと3年間で720万円。月々の生活費では賄いきれない出費が3年間で80万円あったので、トータル800万円ということであろうか。
なお、60歳からの年金の繰上げ受給額は月当たり約13万円だそうだ。そうなると、月の赤字7万円はどうするのだろうということが気になるが、その点については動画では触れられていない。
57歳で、3年間前倒しで早期退職したことの感想
サラリーマンにとって、定年前の早期退職を意識する人は多いだろうが、実行に移せる人はそれほど多くないと思う。やはり、安定収入を失うとか、肩書・居場所を失うのは怖いと思うからだ。また、早期退職に踏み切ったものの、後悔している人もいる。
ただ、この動画のケースは成功事例のようだ。私が思うに、今回の成功のポイントは、①早期退職して、やりたいことが明確にあった、②支出の大幅な削減を楽しんで実行できた、この2点だと思う。
早期退職のデメリットである肩書・居場所の喪失の問題については、それを上回る「やりたいこと」の存在が必要だろう。また、安定した収入の喪失の問題については、それに対する覚悟、すなわち、支出の削減の工夫が必要となる。
この方は、56歳の時に1年後の57歳で早期退職をすると決めたので、本当に早期退職を考えるのであれば、1年以上前から準備をしておきたいところである。
早期退職のケースについては、今後も引続き情報収集していきたい。