1.定年後の地方移住には惹かれるところがあるが…
都会生活が長いサラリーマンの中には、定年後の地方移住に惹かれる人は一定数いるだろう。実際、地方移住を取り上げるテレビ朝日系列の「人生の楽園」が長期間に亘り高視聴率が続いているということは、地方移住への関心の高いということではないだろうか?
例えば、私も移住できならいいなと考えている「宮崎市」には魅力が一杯ある。
美しく青い海に、白い砂浜。「海」のイメージが強いが、西部や北部に行くと、山と渓谷も楽しめる。
食べ物も決して派手さは無いかも知れないが、弾力があり肉汁の旨味と炭火の香りを楽しめる地鶏の炭火焼は美味しいし、有名なチキン南蛮はお酢の酸味とタルタルソースが絶妙で、牛が好きなら宮崎牛の鉄板焼きを楽しめ、締めの麺は有名な辛麺だけではなく、麺が柔らかく柚子の効いたいりこ出汁で食べる釜揚げうどんも美味しく、海鮮丼の安くて美味しいお店もある。
宮崎と言うと、マンゴーが有名であるが、他にも、きんかん、日向夏、きゅうり、ピーマン、トマト等、安くて美味しい野菜や果物も楽しめる。
そして、何と言っても、物価、特に不動産価格が低い。
首都圏でそこそこの持ち家があれば今なら5千万円位で売れるだろう。
他方、宮崎市内で築浅(5年以内)の60㎡程度の中古マンションであれば2千万円台で買えるだろう。そうすると、その差額の3千万円をFIREの目安となっている4%で回せば、年間120万円・月間10万円の金融収益が得られる。宮崎市の生活コストの低さを考えれば、余裕ではないか?
宮崎市内であれば、日常生活に必要なものは揃うし、美しい自然、温暖な気候の下、定年後の生活を満喫できそうに思えるのではないだろうか?
2.しかし、定年後の地方移住は現実的な選択肢とは思えない…
定年後は都市部ではなく、自然の中で暮らしたいというのであれば、地方移住は非常に魅力的に見えるだろう。
しかし、地方移住にはデメリットも存在するので、冷静に考えてみると、あまり現実的ではない様にも思える。
そのデメリットとしては、真っ先に、「仕事が無い」ということがあげられる。
物価水準が低い代わりに、所得水準も低いということである。
もっとも、「定年後だから仕事は気にしなくてもいいのでは?」と思えるかも知れない。
この点、全く働かないフルリタイア状態を前提とするのであれば、確かに問題ないだろう。しかし、私の様に「定年後ひとり起業」を目指して、たとえ少額でも稼ぎたいという意向があれば、地方は何かと不便である。ネットビジネスと言っても、相当程度、対面での仕事は要求されるだろうし、とにかく、ビジネスに係る情報が入って来ないし、刺激を受けることもない。
また、地方移住のデメリットとして、「不便さ」が指摘されることは多い。
「日常生活」的には、クルマで行ける大型イオンがあれば何でも揃うだろうが、それ以上を求めると一気にハードルは上がる。「たまには高級時計を見に行きたい」とか、「たまには高級寿司屋やミシュランレストランでディナーがしたい」と思えば、高い交通費と、宿泊費を掛けて大都市(一番近くて福岡?)に出向く他ない。
それから、都会暮らしが長いサラリーマンにとって、「美しい自然」は非常に魅力的なのは間違いないが、それまでの都会暮らしが長い分、都会での暮らしが恋しくなったり、自然に飽きたりする可能性はある。
もちろん、そのあたりの思いは人それぞれなのだろうが、一旦、都市部を脱出して地方移住をスタートしてしまうと、後戻りは非常に大変なので、慎重に考えないと行けないということだ。
3.そこで、地方移住も視野にいれながら、候補地を旅行してみればいい
短期間の旅行で現地を訪問しただけでは、本当に移住していいのかどうかは判断できない。
そこで、本気で定年後の地方移住を検討するのであれば、移住も視野に入れた長期滞在を少なくとも一度はやってみた方がいいだろう。
結局、旅行の場合は、その地の「ハレ」の部分、非日常的な面しか見えないのだろう。
例えば、函館の場合だと、観光で行くと、朝は朝市で海鮮丼を食べて、金森倉庫のベイエリアや元町の坂道や歴史的建造物を訪問し、夜はお決まりの函館山の夜景を見に行くということになるが、函館に住んでいる人は、日常その様な生活はしない。
従って、地方移住を考えるのであれば、旅行では行かない地元の人が行くような飲食店とかスーパーに行ったり、不動産屋を周って現実的な住宅事情を調査したり、求人事情(定年後にバイトも想定するような場合)や交通機関もチェックすべきであろう。旅行では見ないことの多い、その地の「ケ」の部分、日常的な面も調べてみるのである。
これは決して退屈なものではなく、その地を多面的に見て理解することにつながるので、面白い旅行になるのではないだろうか?
その場合は、豪華なリゾートホテルではなく、地味なビジネスホテルあたりに1週間程度は滞在したい。中にはお得な連泊プランがあるところもあるので、滞在日数の割に安く泊まることも可能なようである。
現役中はまとまった長期休暇を取るのは難しいだろうが、役職定年を迎えたり、再雇用の段階になると、お気楽な立場になるので、トライしたいものである。
4.地方移住の候補地について
地方移住といっても、候補地は無数にある。
したがって、優先順位を決めて、絞り込んでいく必要がある。
私の場合、山系リゾート(軽井沢、箱根、山中湖、那須等)は好きなのだが、冬の寒さが厳しかったりするのは苦手なので、定住をするなら、海系の温暖な地がいい。
今のところ、思い浮かぶ街は多くは無いが、今後、情報集しながら候補地も増やして行きたい。よって、この記事も、ときどきアップデイトしようと思っている。
宮崎市
まずは、上述した宮崎市である。
温暖で、海に面して、山も楽しめ、食べ物も美味しく、不動産価格も安い。
ただ、九州の県庁所在地の中では小さな都市で、日常生活以上のものを探そうとすると苦労する。また、地理的にも大都市圏から遠いというデメリットもある。
そして、宮崎が好きなのであれば、他に、鹿児島、熊本、大分、或いは、福岡(糸島等の福岡市に近い郊外)なんかも候補になり得るかも知れない。
知りたいことや行ってみたいところはいろいろあるが、まずは、宮崎市に少し長めに滞在して調査したいものだ。
松山市
温暖で海系の移住候補地となると、松山市が思い浮かぶ。
こちらも宮崎市同様に温暖な気候で、美しい海や山といった自然にも恵まれている。
そして、松山固有の魅力として「コンパクトシティ」という点があげられる。
市の中心部に、医療施設、公共施設、商業施設がギュッと集中し、市電等の交通の利便性も高く、生活し易いのである。また、空港も車で15分、道後温泉も電車で10分程度というのも魅力である。
デメリットは本州からのアクセスが悪い(この点はお隣の高松市の方が良い)ということである。ただ、仕事については、宮崎市よりも見付けやすそうだ。
それから、松山市というか、四国の場合、予讃線、予土線という鉄道が好きな人にとっては魅力的な路線が通っている。
ただ、松山市に関しては、宮崎市の場合と同様、高松も候補に挙げて検討した方がいいかも知れない。
長久手市
長久手市とは、名古屋市と豊田市の間に挟まれた、新しいベッドタウンである。
何故ここが出て来たかというと、単にYouTubeやウェブを検索していたら、住みやすい街ということで紹介されていて、興味を持ったからである。
長久手市の魅力は、新に区画整理によって生まれた街ということで、街並みが整備され、市街地はスーパー、病院、学校等があって利便性が高く、非市街化区域は自然が残されていて環境も良いということである。リニモという新交通システム(ゆりかもめのようなイメージ?)を有し、地下鉄が利用でき、名古屋インターも近く、交通面で優れている。そして、大型商業施設であるイオンやIKEAも出来ていて便利ということである。
宮崎市や松山市とは大きく異なり、三大都市圏の一角なので、切り口は全く異なるが、首都圏と比べて不動産価格は低く、築浅(築10年以内)の60㎡以上の中古マンションが3千万円ほどで買える点は魅力である。
もっとも、ここを候補に挙げた理由には、名古屋圏に対する好奇心というのがある。
私は名古屋圏には一切住んだことは無いし、旅行でも、静岡、岐阜、三重はあっても、愛知県はスルーしてしまう。また、本物の名古屋人は名古屋から出て働かないということを聞くが、名古屋圏出身の人との接点も無い。しかし、名古屋圏は大きい都市圏であり、独自の文化もあるようなので、ミステリアスな魅力がある。
現実的に、ここを移住地として選択する可能性は無いと思うが、一度、ゆっくりと訪問したいものである。
地方移住ということ考えると候補地は非常に多いが、旅行とは異なり、社会、経済、文化、歴史、交通、気候、近隣といったより広い観点から街について見たり考えたりできるので、非常に興味深い。
今後は、定年準備の一環として、地方移住の視点を持った旅行をしたり、候補地を考えてみたりしていきたい。