定年後と読書、2025年に読んだ、おすすめ国内ミステリー5選

定年後は読書を楽しむチャンス

 私は定年準備段階の50代のサラリーマンである。

定年後は、とにかく時間があるし、今ではメルカリとかブックオフで安く人気の本や名作が入手可能なので、読書を楽しむには非常に良い環境である。

 ただ、ライフスタイルを急に変えることは難しく、定年後に読書を上手く楽しむには、定年準備の段階である程度、読書の習慣を形成しておきたいものである。

 そこで、私は去年ぐらいから、主として好きな国内系ミステリーを対象に、読書を始めてみた。 

2025年(1月~7月)に読んだ、おすすめ国内ミステリー5

 私は2025年になって、国内系ミステリーを数十冊くらい読んできた。

今回はその中で、まるっきり自分の主観であるが、ベスト5を紹介したい。 

本を選ぶ基準

 どうやってミステリー本を選ぶかということであるが、私の場合は、各種ミステリー・ランキングと、読書系YouTuberの動画を参考に、面白そうなものを選んでいる。

 私は、どんでん返しが売りの、本格物が好きである。そして、長編については、時間が十分にある定年後に楽しみたいと考えているので、同じくらいの関心度であれば、短編を選択するようにしている。

 その意味で、2024年のミステリー・ランキングの三冠王であり、かつ、短編である「地雷グリコ」は年初より読んでみたいと思った。なお、「地雷グリコ」はまだ新しく文庫化されていないこともあり、ブックオフではなく、書店で新刊を買って読んだ。

 「爆弾」も映画化されるようで、こちらも非常にミステリー・ランキング系の評価が非常に高かったので、「短編」ではなかったが、これも是非読んでみたいと思っていた。こちらもブックオフでは安くなかったが、文庫化されたので、文庫本を書店で購入した。

 「方舟」もミステリー・ランキングで非常に評判が高かったのだが、それ以上に、読書系YouTuberの紹介に惹かれて読んでみたいと思うようになった。こちらも文庫化されていたので、書店で購入した。

 「真相をお話しします」と「許されようとは思いません」は、読書系YouTuberの動画を参考に読んでみようと思った。また、何故か2冊ともブックオフで安く(220円?)買えたので、非常に良い買い物となった。 

私のおすすめの5冊の概要と感想

 ①真相をお話しします(結城真一郎著)

 https://www.shinchosha.co.jp/book/103263/ 

これは、YouTube、中学受験、マッチングアプリ、不妊治療、リモート飲み会といった現代的な題材をテーマにした5話から構成される短編集である。

 家庭教師のバイト先の家庭を訪問した大学生が、自分の息子の塾や成績のことをよく知らなかったり、マッチングアプリで中年男が出会った若い女性が妙に積極的だったり、リモート飲み会の画面に誰かの姿が映ったり、明らかに何らかの違和感を読者に感じさせるのであるが、読み進めて行くと、それを遥かに上回る衝撃がラストに待っているという本格ミステリーである。

 私が本書を今年読んだ中でベストだと感じた理由の1つは、非常に読み易く、頁数も少ないのですぐに読めてしまうのだが、どんでん返しや各話の裏にある「闇」が非常に大きいからである。

 ただ、マニアックなミステリー通の方からすると、若干、現実性や緻密なロジックという点では、長編物と比べると若干満足度は落ちるかも知れない。

 ただ、映画にもなったくらいで、非常にインパクトは強く、読んで後悔することは無いのではないか?また、文庫化されているし、ブックオフでも置いてあったりするので、安く買うことができそうである。 

②地雷グリコ(青崎有吾著)

 https://www.kadokawa.co.jp/product/322011000437/ 

これは、殺人事件とは無縁の、非常に頭の切れる高校生たちが一対一で戦うゲームである。

このため、犯人当てとか、密室といった本格物特有の楽しみは無く、頭脳戦とか心理戦を描いた作品である。

 背景は青春物・学園ドラマ系のラノベのようなイメージだが、そこで競われるゲームはエグく、ルールの裏を読みあったり、イカサマ的な仕掛けをしたり、騙される振りをしたりと、手に汗握る展開で、次々と頁をめくる手が止まらないという作品である。

 その意味では、漫画の傑作ではあるが、「カイジ」シリーズに近い「勝負物」的な面白さが売りなのかも知れない。

 ただ、弱点があるとすれば、ゲームのルールが若干分かりにくいところがあることか?

 いかにも続編が出そうな期待感があるラストとなっているので、即編が出れば即買いたいと思う。 

③爆弾(呉勝浩著)

 https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000363042 

これはミステリー・ランキングを勝ちまくり、今年の秋には映画化も控えているという、今もっともホットなミステリーかも知れない。

 本書は、最後のどんでん返しもあるのだが、作中で次々と爆弾が爆発していく緊張感があり、リアルタイムで進行するサスペンス物としての面白さも十分ある。

 この作品の魅力は、やはり、スズキタゴサクのキャラにあるのだろう。社会の底を這いつくばって生きてきたスズキは、非常に頭が切れ、人の心理を読む能力にも長けている。それでいて、表面的には人を食ったようなふざけた態度を取り続ける。決して共感しては行けないのだが、何となく共感しそうになる魅力や人生観・社会観も持ち合わせている。

 そして、このスズキと対峙する、こちらも頭も切れるし、人の心も読める菅家との取調室での会話。

 文庫本では500頁位の長編であるが、厚さを感じさせないストーリー展開と、文章力。非常に満足の行く一冊であった。

 なお、続編となる「法定占拠 爆弾2」も販売されており、私もさっそく書店で買って読んでみたが、「爆弾」に負けない傑作であった。ミステリー・ランキングとか評価においては、「爆弾」より若干劣っているようだが、それは、スズキタゴサクの出番が思っていたよりも少ないからかも知れない。ただ、「爆弾」が気に入った人には、お勧めしたい一冊である。

https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000395220 

④許されようとは思いません(芦沢央著)

 https://www.shinchosha.co.jp/book/101431/ 

これは、上記の3作と比べると若干知名度は落ちるかも知れないが、内容的には決して劣っていない傑作短編集。

 本書の魅力は、「イヤミス」と括られたりすることもあるが、5つの短編がそれぞれ個性的で、多様なトリックやテクニックが駆使され、各話の雰囲気も微妙に異なっていること。

 「ありがとう、ばあば」はステージ祖母と孫との歪んだ関係を描く、非常にブラックな作品。直感的には、米澤穂信さんの名作短編集「儚い羊たちの祝宴」に通じるダークな世界観があり、非常に印象的。

 「姉のように」は、育児ノイローゼをテーマに書かれた妙なリアリティが怖い話だが、最後のどんでん返しで、やられてしまう。

 もっとも、表題作の「許されようとは思いません」は、閉鎖的な村の中での祖母の殺人の謎を解き明かす話であるが、ラストはスッキリとした読後感に仕上がっている。

 私は、この作家、芦沢央さんは大好きで、「汚れた手をそこで拭かない」も読んだが、非常に素晴らしい作品であった。 

⑤方舟(夕木春央著) 

https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000392988 

本書は、大学時代の友人たちが山奥の地下建築を訪れたところ、翌朝に地震が発生し、そこから抜け出せない閉鎖空間が作られるという、おきまりの孤島での殺人物。当然、本書でも殺人事件が発生し、脱出のためには誰かを生贄にする必要があり、その犯人をみんなで突き止めようというストーリー。

 本書の特徴は、何といっても、どんでん返しが強烈すぎること。

どんなミステリーでも、大なり小なり、どんでん返し的な仕掛けがあるのだろうけど、本書はとにかく、それが余りにも大技で、美しく決まっている。そんな作品。

 私としては、もともと長編が苦手な上、上の4作と比べると途中の展開が若干冗長な感じがしがた、とにかくラストの見事さだけを取ると、ナンバー1であろう。

 こちらも、是非読んでみていただきたい傑作である。 

これから年内に読みたい国内ミステリー

 2025年は、あと5か月位となったが、私はとりあえず、以下の国内ミステリーを読もうと思っている。 

  • 「透明人間は密室に潜む」(阿津川辰海著)
  • 「私たちが星座を盗んだ理由」(北山猛邦著)
  • 「首無しの如き祟るもの」(三津田信三著)

 上の2つは、「短編」で、読書系YouTuber達からの評判が非常に良く、私が読んだことのない作家なので、読書の範囲を拡げられるかも知れないと思ったから。

 「首無しの如き…」は、少し前にミステリー・ランキングを総なめにした作品で、こちらも評判が良いから。特に、「ある視点を変えると、21?個の謎が一気に解き明かされる」という点に興味を持った。

 8月中には、どれか一冊を読んでみたい。