ブックオフだと良質なミステリーを安く買える
定年後、時間は十分にある。しかし、現役時代と比べると収入が減るので、安く上手に読書を楽しみたい。その点、ブックオフやメリカリは便利である。メルカリを上手く使いこなすことが出来れば、ブックオフよりも安く買って、高く売ることも可能なのだろうが、面倒くさがりやの私は、ブックオフ派だ。都内だとブックオフの大型店舗があるので、私は国内ミステリーを時々、まとめ買いをしている。
2025年内に、ブックオフで面白い国内ミステリーをいろいろと買うことができた
私は定年準備中の50代のサラリーマンであるが、定年後を見据えて、去年くらいから積極的に読書を楽しむこととした。昔から、国内ミステリーが好きなので、昔ミステリー・ランキングの上位を飾っていた名著や、掘り出し物の比較的新しい作品を目当てに、私は月に1回位は、ブックオフの大型店舗に繰り出すこととしている。
2025年に入って、何十冊とブックオフで買ったが、今回はその中で私が特に良かったと思う国内ミステリーを5冊紹介したい。
いずれも、ブックオフでワンコイン以内で買えたものであり、5冊全部合わせても2千円以内に収まった。面白いかどうかわからない新刊1冊分の値段で、評価とかミステリー・ランキングの順位が高いことがわかっている本を5冊買えるのであるから、良い買い物だったと思う。
2025年(1~7月)にブックオフで買った国内ミステリー5選
どれもおすすめだが、私の主観で良かったと思う順に紹介する。なお、コスパは考慮していないが、「儚い羊たちの祝宴」(米澤穂信著)が110円で買えたのは非常にお得だったと思う。
①六人の嘘つきな大学生(浅倉秋成著)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322210000678/
まずは、映画にもなった話題作である。各ミステリー・ランキングにおいてトップ10入りしており、ミステリーとしての評価も高い。まだ比較的新しい作品にも関わらず、ワンコイン以内で買えたのは非常に得した感じである。
これは、人気のIT企業内定を狙う6人の大学生が、たった1つの内定の椅子をめぐって争うというお話である。
登場人物の印象が二転三転し、何が本当なのかわからなくなり、早い展開で物語は進んで行く。犯人当て、隠された動機等、本格ミステリーの謎がぎっしりと詰まっていて、更に、「嘘」が当然の前提の様な「就活」のあり方にも切り込んでいる、社会派的な要素も包含された作品である。
本の帯のイメージとは異なり、読後感は悪くは無いが、私としてはもうちょっとブラックな仕上がりにしてもいいかなと思ったが、それは個人の好みの問題であり、十分楽しめる作品であった。
②汚れた手をそこで拭かない(芦沢央著)
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163912608
直木賞候補にもなっている、最近人気・評価が上昇中の芦沢央氏の短編集である。
「許されようとは思いません」が非常に良かったので、本書をワンコイン以内で買えてラッキーだと思った。
プールの栓を閉め忘れて水を出しっ放しにしたことをごまかそうと策略した教師がドツボにハマって行く話、元カレを見返すためにお金を貸したばかりに、どんどんと追い詰められていく有名料理研究家の女性の話、認知症の妻が自宅に誤配された電気代の請求書を忘れたことに起因する事件と、誰でも思い当たるような、ちょっとした嘘、失敗がヤバイ事態を引き起こすといった短編集である。
短編とは言え、多様なトリックや本格ミステリーの技法が散りばめられ、非常に満足の行く作品であった。私は特に、最後の「ミモザ」が最も気に入った。若干ホラーの要素も含まれる、サスペンス的な要素が多く、テレビドラマ化しても面白いのではないかと思った。
芦沢央氏の「許されようとは思いません」と本書の2冊を読んで、すっかり私は芦沢央のファンになり、次は最新作の「嘘と隣人」の新刊を本屋で買おうかなと思っている。また、長編で評価の高い「夜の道標」をブックオフで狙っている。
③スモールワールズ(一穂ミチ著)
https://smallworlds.kodansha.co.jp/
一穂ミチさんというと、直木賞受賞作の「ツミデミック」が有名だが、私は若干本書の方が面白いかなと思っている。私としては、こちらの短編集の方が本格ミステリー的な雰囲気が強いと感じたからだ。
これは、不妊、DV、家族の死といった、重いが実際にあり得るテーマを題材に、家族の苦境、葛藤、絆を描いた作品である。書評などを見てみると、結構、本書の短編における好き嫌いが結構分かれる感じもする。
私としては、最初の短編「ネオンテトラ」が気に入った。これは不妊に悩む美人モデルの美和が、夫に不倫をされている状況下、DVを受けている疑いのある中学生男子と交流を始める話である。まさか、30代の美人モデルの主婦が中学生と…、という風に話は進むが、そこから驚くべき展開が起こっていく。短編であるが、中味は非常に詰まった作品である。
また、コメディタッチであるが人情味の溢れる「魔王の帰還」、米澤穂信さんの「儚い羊たちの祝宴」を彷彿させるようなブラックな「ピクニック」等、非常にバラエティにも富んだ短編集である。
一穂ミチさんも、2冊を読んで、すっかりファンになり、私は今、ミステリーではないが「パラソルでパラシュート」を読んでいるところである。
④儚い羊たちの祝宴(米澤穂信著)
https://www.shinchosha.co.jp/book/128782/
非常に有名な、ミステリーの巨匠、米澤穂信氏の短編集である。
これ、10年以上前に、私は図書館で借りて読んだ記憶はあるのだが、恥かしながら内容はほとんど覚えていない。そこで、たまたまブックオフで110円で売っているのを見掛けて、すぐに買ったのである。
本書は短編5話が収録されているが、主人公は全て女性で、富豪の家が舞台になっているという共通点がある。不気味で暗い雰囲気であるが、オチはどれも結構ブラックであり、読後感が良いとは決して言えないだろう。
私はその中でも最もブラックかも知れない「玉野五十鈴の誉れ」が、最も気に入った。ある名家の女系家族を仕切っている非常に意地悪なおばあ様がいて、その孫と住み込み家政婦?を巡るストーリーだが、伏線が上手く張られ、エグいラストに繋がる、秀逸なミステリーだと思った。
ただ、同じ米澤穂信氏の短編集だと「満願」の方が、バラエティに富んでいるだろう。
いずれにしても、今ならブックオフで安く買えるだろうから、決して読んで損は無い名作である。もっとも、この雰囲気が嫌いでないということが前提ではあるが。
⑤カラット探偵事務所の事件簿3(乾くるみ著)
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784569900865
こちらは「イニシエーション・ラブ」で有名な乾くるみ氏の連作短編集である。
浮気調査や信用調査が苦手で、謎解き専門という風変わりな探偵事務所の所長の古谷と助手の井上が、依頼人の持ち込む謎を次々と「カラッと」解決していくというお話である。
シリーズものであるが、第3集が特に良かったというわけではなく、たまたまブックオフで売っていたのが第3集だったというだけである。本当は第1集も読みたいのだが、なかなか本屋でも見当たらない。
ここでは「謎解き」専門であるが、殺人事件のような犯罪を取り扱うのではなく、日常生活におけるちょっとした謎を解き明かそうとするお話である。
本書だと、父の墓に毎月花を供えている人物を特定して欲しい、学生のゼミ会のクリスマス・パーティーのプレゼント交換の贈り主を特定して欲しい、離婚した妻が家に侵入して何を盗んだのか教えて欲しい、といった謎が提供される。
これは、「イニシエーション・ラブ」のような強烈な仕掛けやトリックは無いが、ライトな感覚で、所長の古谷と助手の井上のやりとりが面白いという点が魅力である。
ただ、ミステリーとしては、もうちょっと大きめの仕掛けとか、どんでん返しがあった方がいいかなと私は思った。
次にブックオフで私が狙っている国内ミステリー
ブックオフの魅力は、とにかくお手軽に安く、名作を買うことができることである。
次に私が狙っているのは、結構前の名作、ミステリー・ランキング上位の作品で未読のものである。
具体的には、有栖川有栖の「インド倶楽部の謎」、北森鴻の「凶笑面」、湊かなえの「リバース」あたりである。
また、読書系YouTuberのショート動画でも見て、他に面白そうなものを見つけたいと思う。