「ジェイソン流お金の増やし方」(厚切りジェイソン著)が気になった理由
私は50代のサラリーマンであり、去年あたりから本格的に老後資金を貯め始めた。投資に関する本は軽く十冊以上読んできたのであるが、書店に行くとマネー本の中で「ジェイソン流お金の増やし方」が売れているようで興味を持った。
知名度を活かして、お笑い芸人が「お金」や「投資」に関する本を出しているが、本書が一番人気の様なので、ブックオフで390円で買ってみた(買えたのは2021年初版の旧版)。何故改訂版を書店で買わなかったかというと、書店でパラパラと見たところ、内容的には既読の他の有名なオーソドックスなマネー本と特に変わらない内容だったと感じたからである。
https://books.rakuten.co.jp/rb/16919155/
私としては、本の内容よりも、本書が何故売れているのかという点に興味があった。
本書のポイント
たった3つの手順で資産を増やすジェイソン流投資法
本書のキーポイントは極めてシンプルである。また、奇を衒ったものではなく、非常にオーソドックスなものだと思われる。
- 支出を減らして、
- 残りのお金を投資に回して、
- 待つ
これだけである。そして投資対象は米国株メインのインデックスファンドである。
著者の厚切りジェイソンは、「米国株」に自信を持っているようだが、特段変な癖も無い、誰にでも再現性の高い方法だと思われる。
ジェイソン流の節約術
彼の投資手法は、グローバル株(アメリカ株)のインデックスファンドに積立投資をして、ひたすら長く持ち続けるという方法である。これ自体はよくある方法で、結局、出来るか出来ないかの差がつくのは、投資のための原資を捻出するための「節約」術だと思われる。
本書によると、ジェイソンのある1か月の支出額は27万7463円。これはコロナ初期のものなので、今だともっとかかるだろう。また、住居費と保険代は含まれていないそうなので、節約系YouTuberのような実行不可能なレベルの節約ではない。ただ、ジェイソンは夫婦と子供3人の5人家族であることを考えると、かなり支出は抑えることが出来ているのだと思う。
ジェイソンが本書で強調しているのは、携帯代金を安く抑えていることである。格安SIMを使って、夫婦2人で2884円となっている。また、外食はほとんどしないとか、被服費はこの月はゼロだったように、変動費も当然コントロール出来ている。
ジェイソン流・本気の節約術
普通の家庭にとって、お金を貯めることが出来るか否かの分岐点は、「節約」を上手く遂行できるかに掛かっていると思われるので、本書の節約術について、もう少し紹介したい。
もっとも、ジェイソン本人が本書で「僕の節約方法はちょっと極端かも知れないけど…」と書いている通り、普通の人が全部真似することは難しい。ただ、以下のうち、一部でも実践できれば、悪くないだろう。
- 自動販売機やコンビニでペットボトル飲料はなるべく買わない
- 必要が無いならコンビニには行かない
- 交通手段はまず歩く
- より安いスーパーで大量買い&割引買い
- スペックが大して変わらないなら安い代替品で対応
- 洋服は基本買わないorお下がり
- 飲み会には基本行かない
- ジム公共施設を利用
- サブスクサービスを見直す
- ポイント倍増にだまされない。ポイントはごほうび遣いをしない
- 欲しいものは少し待ち、安いものを買う
- 家族がお金に対して同じ価値観を持つ
全体を通じて見た印象は、日本のFIRE達成者と似ていると思った。
面白いのは、12番目の「家族がお金に対して同じ価値観を持つ」というところで、これは現実的には難しいかも知れない。私が読んだFIRE達成者の本やコンテンツは、当事者が全て独身ということもあり、自分自身が頑張ればいい話だが、特に子供が言うことを聞いてくれるかは難しいところであろう。
ただ、コンビニに行かないとか、服は買わないとか、電車賃節約のために歩くといったところは、定年準備中のサラリーマンは厳しいかも知れないが、(特に行きたくはない)飲み会に行かない、ジムの代わりに散歩で代替する、サブスクの見直しあたりは、参考にした方がいいのではないだろうか?
もっとも、節約については、生命保険、携帯代金という固定費を見直すと、後は変動費計で月に1万円位節約できれば、サラリーマンはボーナスがあるので、積立投資の原資は作れるだろう。
副業の推奨
本書では、節約術だけではなく、副業を推奨している。
ジェイソン自体が、お笑いは副業で始めたということもあるが、積立投資の原資を増やせるだけではなく、定年後の遣り甲斐にもつながるだろう。
アフィリエイト、note等のコンテンツ販売が出来るくらいまで、ブログやSNSを磨くことが出来ればいいが、それは万人には向かないので、他に内職的なもの、アルバイト的なもの、メルカリ等の販売系等、自分に合った方法を50代のうちに見つけておくことが望ましい。
本書が売れた理由について考えてみる
本書で紹介されている「お金の増やし方」は、オーソドックスものであり、再現性が高い方法と考えられる。このため、定年後に向けた老後資金の形成において、十分参考に出来る良書と思われる。
ただ、書いている内容は特別なものでは無いのに、何故本書は人気なのだろうか?
まず、思いつくのは、著者である厚切りジェイソンが有名人であるということだろう。
これは他のお笑い芸人のマネー本にも通じることであるが、誰も知らない一般人の銀行員やFP(ファイナンシャル・プランナー)の本よりも、手に取ってみようという気になるのかも知れない。
それから、厚切りジェイソンは米国人という特徴がある。外国人のお笑い芸人というのは非常にユニークな存在であるし、アメリカは投資が進んでいるというイメージがあるので、その点はプラスに影響したのではないだろうか?
また、本書は非常にわかりやすくて、読み易い。
節約でお金を浮かして、そのお金でインデックスファンドへの積立投資をして、後は待つだけ、という流れはわかり易い。そして、具体的な金額を示しながら、自分自身の節約術とそのポイントについて詳しく紹介している。積立投資においては、「節約」で如何にして原資を抽出できるかというところはカギなので、このあたりは参考になるだろう。
更に、本書では自分が投資しないものとして、「成長性、流動性が悪いもの、そして暗号資産には絶対投資をしない」と明示しているところも良いだろう。投資の初心者は、周りに儲かっている人がいると気が散るものなので、インデックスファンドの積立投資だけで十分だということについて、背中を押してあげるのは、親切だと思われる。
しかし、ジェイソン流のお金の増やし方を実践するのは「本当にひと握りの人」
本書を読んで、私が一番印象に残った個所は、「はじめに」で書かれている、ジェイソン流のお金の増やし方を実践してくれるのは「本当にひと握りの人」という点である。
本書で書かれている方法は、節約⇒浮いたお金でインデックスファンドの積立投資⇒待つ(長期間続ける)、というオーソドックスな方法であるにも関わらず、それをジェイソンは友人や知人に伝えてきたにも関わらず、実践出来る人はごく僅かということである。
やはり最初のステップである「節約」をやるのが気が進まず、この段階で躓くひとが多いということなのだろうか?節約ができれば、銀行でもネット証券でもインデックスファンドの積立をするのは難しくないので、「節約」さえクリアできれば、その先はスムーズに行きそうなものである。
「節約」は辛いからやりたくないという気持ちは理解できるが、それは、ゼロイチの話ではなく、程度の問題だと思う。月に5万円を浮かすのは辛いかも知れないが、月に1万円であれば、支出の中味さえチェックをすれば、それほど辛くはないようにも思える。
このあたりは非常に気になる点でもあるので、今後、調べて行きたいと思う。