定年後の生活について、支出面からじっくりと考える
老後、特に年金生活になると、現役時代と比べて収入は大幅減となる。
そうなると不安なので、私もそうであるが、現役時代からジタバタと老後資金の準備をしている人は少なくないだろう。
しかし、むやみに悩んで、お金に翻弄され過ぎるのも望ましくはない。
じっくりと一度、老後の支出について、体系的に考えてみて、何にどう対処すれば良いかをクリアにしたいものだ。
そこで、私は何冊も本を持っている、経済コラムニストの大江英樹さんの「支出の三分法」について検討したい。
https://mainichigahakken.net/future/article/6-6.php
大江英樹さんの「支出の三分法」とは?
一般的に、お金の世界で「三分法」と言うと、
①キャッシュ(現金・預金)
②有価証券
③不動産
資産をこの3種類のものに分けて投資をすべし、という考え方が思い浮かぶ。
しかし、これは富裕層についての話であって、サラリーマンの場合は不動産と言ってもマイホームのみの場合が多く、投資用の不動産をいくつも保有している人は少数だろう。
そう考えると、サラリーマンが老後を考えるにあたっては、ストック(資産)ではなく、フロー(支出)面に着目し、支出を以下の3タイプに分けて考えるのが良い、というのが大江英樹さんの「支出の三分法」である。
①日常生活費 ⇒ 年金
②自己実現、一時的な出費 ⇒ 60歳以降に働いて得る収入
③医療・介護費 ⇒ 退職金、貯金
まず、フルリタイア後の年金生活の場合、日常的な生活費は政府の統計によると20数万円位と言われている。これについては、年金、企業年金、私的年金でほぼカバーすることであるから、これを充てるということである。
次に、②の自己実現、一時出費であるが、これは、旅行、外食、趣味等にかけるお金である。
せっかく長い間働いてきたので、趣味・娯楽についても可能な範囲で楽しみたいものである。
こういった費用を生活費に含めてしまうと、かなり窮屈になってしまう。また、こういった旅行や外食等は毎月恒常的に生じるわけではなく、自分自身でコントロールすることが可能である。このため、日常的な生活費とは別にして、年金以外の財源で賄おうという発想である。
具体的には、アルバイトとか、副業的なビジネス(メルカリ、アフィリエイト、note等のコンテンツ販売)、或いは、定年後のひとり起業等によって賄うということだ。ここで想定される金額は月に5~10万円程度であるので、特別なスキルがなくても達成することは可能であろう。働いた分は専ら趣味や娯楽に使うということであれば、それなりのモチベーションも上がるのではないだろうか?
また、これは大江英樹さんが言及しているのではなく、私自身の考えであるが、ある程度経済的に余裕があるサラリーマンの場合には、金融収益とか賃料収入の一部、或いは、退職金以外の貯金の一部などを原資にしても悪くないと思う。
それから、カギとなるのは、三番目の医療・介護費用である。
これらの支出は自分自身でコントロールすることができないし、発生した場合に、どれぐらいの費用になるか事前に予想しにくいからである。
要は、老後の支出の中で、最大かつ最も不確実なのが、この医療・介護費用であるので、それへの備えとして、いざという時には退職金を充てればいいということである。
逆に言うと、不確実な医療・介護費用に備えるために、退職金はリスクのある金融商品で運用するのではなく、個人向け国債等の元本確保のもので手堅くキープしておけということである。
もちろん、生命保険を使うというのもあるが、その際には、必要以上に保険代を払わないように留意すべきである。過大な保険代の支払いによって、日常生活費や趣味・娯楽のお金を削ってしまうのは避けたいからである。
(もっとも、何故か経済評論家系の人達は、必要以上に生命保険に対して辛口のように感じられるが…)
「支出の三分法」実行に向けての考察:その人なりのカスタマイズが必要か?
大江英樹さんの「支出の三分法」は、現実的で心理面も考慮した良いアイデアだと思う。
しかし、サラリーマンといっても、資産や収入・支出状況においては様々であろうから、その人にあった方法にカスタマイズする必要があるのではないかと思う。
例えば、日常生活費は年金を充てるということであるが、高給サラリーマンだった人にとっては、月に二十数万円では苦しい場合もあると思う。その場合は、それなりの老後資金が蓄積できていたり、相続によって得たそれなりの資産があれば、そこからの金融収益も充当していいかと思われる。
また、リフォーム、クルマの買い替え、家電・家具等の耐久消費財の買い替え等については、老後のバイトじゃ賄いきれないので、退職金以外の貯金をどう充当するかを考えておく必要がある。
もっとも厄介な医療・介護費用については、退職金を充てること、また、退職金は元本確保方の定期預金や個人向け国債で手堅くキープしておくということは賛成である。ただ、退職金以外にそれなりの貯蓄がある場合には、一時払いの生命保険も補助的に活用すればいいかと思われる。この点については、私も勉強不足であるので、これからの課題として、医療・介護費用を賄うための良い保険商品を独立系のFPに相談したいと思っている。
いずれにしても、定年退職をしてしまうと、そこからの資産形成は厳しくなるので、50代のうちから、このあたりの計画や対応策を練っておく必要がありそうだ。