地方移住の魅力
定年後に、漠然と、地方移住が出来たらいいなあと考える人はいるだろう。
実際に、地方移住を実行できる人は、それほど多く無いかも知れないが、地方移住を想像してその地に旅行に行ったり、更に一歩進めて、トライアルで短期移住してみるのも悪くない。
美しい自然環境、その地の海の幸・山の幸・野菜・果物・お酒、都市部とは異なる時間の流れ、生活コストの低さ、地元の人の人柄といった、いろいろな魅力が地方移住にはある。
また、定年後というと60代なので、年寄り扱いされてしまうかも知れないが、地方に行くと高齢化しているので、60代でも(相対的に)若手扱いされて、引っ張りだこという面も魅力かも知れない。
都市部の家を売って、地方移住をするメリット
地方移住にもいろいろなやり方があって、現在居住している住宅はそのままにして、その地方で物件を借りたり、DIYが得意な人は安価な中古住宅を買う(軽自動車1台分位のイメージ)というやり方がある。
他方、都市部にある現在の住宅を売却して、地方に完全に移住するというパターンもある。
この場合、昨今の首都圏の不動産価格の高騰によって、売却した際に多額のキャッシュを手にすることが出来る。
借りるにしても買うにしても、地方の方が不動産価格は圧倒的に安いので、その場合には、多額の貯蓄を持って地方移住できるので、かなりの経済的な余裕が生まれるだろう。
例えば、住宅売却によって、5000万円のお金ができたとする。
そして、3%の利子・配当を得られるなら、税込みで年150万円、手取りベースでも約年120万円(月あたり10万円)の不労所得ができるわけである。
サラリーマンの場合、退職金があるし、年金もそこそこだろうから、この月々の収入と貯蓄があれば、物価の安い地方だと経済的にかなり余裕を持った生活が可能となる。
定年後、自分の大好きな地に移住でき、さらに、お金の余裕もあるとなると、非常にハッピーな生活が送れそうだ。
都市部の家を売って移住することのリスク
もっとも、都市部の家を売って、多額のお金を持って移住することはリスクも伴う。
まずは、「後戻りできない」という点があげられる。
都市部の住宅は売却するのは簡単かも知れないが、購入コスト等を加味すると、再度購入するのは難しい。特に、地方で住宅を買ってしまうと、地方の住宅は売却しにくい。
このため、地方移住早々、「失敗した」と後悔しても、都市部の家を売却する形で移住をしてしまうと後戻りが難しいという問題がある。
また、地方といっても県庁所在地に住むのと、農村地帯に住むのとでは大きく事情が異なるが、地方の場合はクルマの保有は必須と考えた方がいい。別に見栄を張って、ベンツやレクサスを買う必要は無いが、現在クルマ無しで暮らせている場合には、そこは出費が増えることになる。
それから、これは地方によって異なるのであるが、移住先が避暑地の場合、冬場は結構な暖房代(灯油等)がかかる場合がある。北海道、長野県等、夏場は非常に魅力的なのだが、反対に冬は厳しく長い。現在、電気代・ガス代・灯油代等のエネルギー関連コストが高騰しているので、ここは注意しないと予期せぬコストとなりかねない。
さらに、地方移住の一般的な問題点として、「仕事が無い」「時給が低い」といった問題がある。生活コストが低い反面、都市部よりも収入を得るのは難しい環境にある。
もちろん、定年後の移住の話なので、移住先で稼ぐことを想定している人は少ないかと思うが、定年後に「ひとり起業」を考えている場合も、ある程度のリアルでの対応も求められる。従って、「稼ぐ」という点においては、首都圏で居住するのと比べて不利という点は認識しておく必要があろう。
自宅を売却するにあたっては、十分な事前調査が必要
上記の様な事態を避けるためには、現在の家を売却する前に、十分に調査検討しておく必要がある。面倒かも知れないが、トライアル移住をしておくのが無難である。地方の自治体もローコストでこういったものをサポートしてくれるところもあるので、積極的に活用したい。
その点、地方移住先が、自分或いは配偶者の出身地で、十分な土地勘があれば、このリスクはある程度軽減されるかも知れない。
その他のバリエーション
地方移住というテーマからは話が逸れてしまうが、
定年後に住宅を売却して、その売却代金を老後資金として活用するという観点においては、
他にもバリエーションはある。
例えば、同じ地域でも、都心部から郊外というのがそれである。
特に、東京では都心に近い住宅エリアは住宅価格が著しく高騰していて、人気地区のタワマンを売却すると軽く1億円以上で売却可能である。
他方、首都圏でも郊外は、都心と比べると価格高騰の水準は低いので、都市部のタワマンを売却して、郊外(例えば多摩地区)に買い替えると、地方移住と同様の効果が得られる。
また、ダウンサイジングによって、住み替えの差額を老後資金に充てるという方法もある。
定年後には、子供が独立することにより、現役時代は家族4人で80㎡のマンションに住んでいたが、50㎡位のマンションに住み替えるという選択肢がある。
また、割と広めの一戸建てに現役時代は子供と住んでいたが、定年後は家の管理は面倒だし、広い戸建てに必要ないということであれば、コンパクトなマンションに住み替えるというパターンもあるだろう。
さらに、都心⇒郊外×ダウンサイジングを組み合わせれば、その売却によって、かなり十分な老後のためのお金を産み出すことができるだろう。
住宅の住み替えというのは、リスクを伴う大技であるが、上手く活用するとそれによって生み出される経済的効果も大きいので、いろいろと考える価値はあるだろう。