定年後と物欲、生きている間に、どうしても手にしたい物はあるか?

「余命1年」だとしたら、何が欲しい?

 定年後の生き方・暮らし方関係の本やウェブコンテンツを見ていると、生きている間に何がしたいかを考えろということが書かれている。「Die with Zero」という本が流行ったが、確かに、やりたいと思ったことはなるべくやり尽くしたい。

 とは言え、いざ死ぬまでにやりたいことを書き出そうとしても、意外となかなか浮かんで来ない。そこで、更に集中して考えるために、「余命1年」と想定しても、自分の場合は、これといったものが思い浮かんで来なかった。

 このため、抽象的な「やりたいこと」に代えて、物的なものに限定して、「何か欲しい物」は無いかから考えることにした。

 なお、この場合のルールとして、現金化や転売は不可という前提を置くこととした。

純粋に「欲しい物」、定年後について物欲の視点から考えることにしたのである。 

自宅:死ぬまでに豪邸に住んでみたいか?

 「欲しい物」については、値段が高いものから考えることとした。

そうなると、最初に浮かぶのが不動産、自宅についてであるが、死ぬまでに理想の持ち家を欲しいと感じるだろうか?

 もちろん、欲しいと思っても実際には買えないのだが、順序立てて欲しい物を考える上で、想像してみた。

 松濤とか、田園調布とか、芦屋の六麓荘の豪邸をイメージしてみたが、何故か、死ぬまでの限られた期間だけでも、そこに住んでみたいとは特に思わなかった。

 その理由としては、豪邸というのは自分の力を誇示するための物でもあるので、定年後の段階で、そういった見栄は必要ないと感じたからだろう。

 また、そんな豪邸であれば、掃除とか管理が面倒くさいという貧乏くさい発想もある。

 どうせなら、広さは求めないので、60㎡位で、一等立地、例えば、港区のタワマンあたりの方が住んでみたいと思ったりもしたが、高齢者になって、都心に住んでも行くところは限られるような気がした。 

別荘:軽井沢、八ヶ岳、箱根、伊豆、沖縄…

 自宅の次に考えたのが、別荘である。

定年後なので通勤を考える必要は無いため、別荘じゃなくて移住でもいいのだが、リゾート物件に住んで生活をしてみるということを考えてみた。

 そうすると、自分の中では、都心の豪邸やタワマンよりも、こちらに惹かれるものがあった。

定年後で年を取ると、都心のギラギラとした空気よりも、美しい自然に囲まれた生活を欲するのだろう。

 軽井沢とかは悪くない気もするが、私は冬の厳しい寒さは苦手である。

そうすると、山系よりも海系リゾートの方が望ましく、伊豆とか、或いは、沖縄あたりがいいかなあと思ったりもする。

 もっとも、ダイビングとかヨットをやるわけではないので、海は観賞用でいい。

そして、自分の力を誇示する必要も無いので、豪華な建物や、ネームバリューの高い立地に必ずしも拘る必要は無い。

 そうすると、沖縄じゃなくて、宮崎とか松山という選択肢もある。

或いは、鹿児島、大分、瀬戸内海よりの広島でもいいかも知れない。そして、夏場は八ヶ岳とかの山渓リゾートに住めれば言うことは無い。

 リフォーム代は掛かるが、軽井沢以外の山系リゾートであれば、非常に安い価格で購入できる物件が沢山ある。もちろん、所有権は関係無いので、海系リゾートを本拠地とすると、山系は賃貸でもOKである。

 結構、想像すると楽しくなってきた。海系リゾートと山系リゾートを併用する暮らしも夢では無いかも知れない。 

クルマ:冥途の土産に、ベンツに乗りたいか?

 自宅、別荘の次に高額な物というと、クルマであろうか?

私の様な昭和世代は、「いつかはクラウン」という有名なコピーがあったように、クルマはステータスシンボルでもあった。このため、若い世代よりもクルマへの拘りが強い世代であるかも知れない。

 私の場合、ステータスシンボルとしてのフェラーリには憧れるものの、純粋な物としては特に欲しいと思わない。非常に実用性が低いし、あったところでリミッターがついているようで、200キロ超の世界は体験できないらしいからである。

 ステータスと実用性、そして、子供の頃からの憧れという意味では、ポルシェのカレラは悪くは無いが、定年後にわざわざ所有したいかと聞かれると、それ程でもないというのが本音である。

 先ほどの別荘の話と関わるが、リゾート暮らしをするのであれば、車高の低いスポーツカーはフィットしなさそうである。そこだと、昔のルノーサンクのような小型のパワフルな欧州車が欲しい気がする。 

時計:パテック、オーデマピゲ、ロレックス…

 コロナ以降、高級時計市場が盛り上がり、パテック、オーデマピゲ、ロレックスあたりは、定価で買えなくなってしまっている。

 しかし、転売は不可という前提であれば、このあたりは特に欲しいとは思わない。

私の場合、リゾートで似合う、実用性が高い時計が欲しいと思うので、パネライ、チューダーあたりが候補になる。

 あんまり夢の無い話かも知れないが、パネライのルミノール、チューダーのブラックベイプロあたりが候補になりそうで、そうであれば、百数十万円あれば買えそうである。 

服・靴:ブリオーニ、ゼニア、ジョンロブ、ベルルッティ…

 普通の男性、特にサラリーマンは、中年以降になるとファッション・おしゃれに対する関心度は落ちるらしい。職種や業種にもよるが、サラリーマンにとってスーツは仕事着みたいなものであり、選択の幅は限られるので、拘らない癖がついてしまっている。

 そうした中、一定数、ジョンロブ等の高級紳士靴に憧れを持つサラリーマンはいる。

コロナ後値上がりが激しいので、最高級紳士靴ブランドのジョンロブやベルルッティは一足3040万円位になってしまった。しかし、冥途の土産に一足くらいというのであれば、買えなくはない金額であろう。

 もっとも、定年後は、そもそも、ジョンロブとかの超高級靴を履いていくような機会は基本的に無い。そう考えると、定年後、時間が経過するにつれ、高級紳士靴や高級紳士服に対する執着はどんどん薄れていくと思われるが、どうだろうか?

私の場合、以上の様に考えてみると、本当に欲しいなあと感じられる物はリゾート物件くらいかも知れない。見栄を張る必要性や機会が少なくなるので、高級車、高級時計、高級靴とかへの関心度は下がりそうである。

 ただ、定年後は全体的に物欲は弱まりそうであるとするなら、本当に欲しい高級品は入手しやすくなるかも知れない。何故なら、それ以外の高級品に対する欲求が失せるので、1点豪華主義が可能となるからである。