1.「【50代のお金事情】平均貯金額はいくら?知っておくべき老後準備の賢い進め方」
りそな銀行の「みんなが知りたい資産運用」というウェブサイトの「よく読まれている記事」の第2位にランクされているのが、この記事である。
https://www.resonabank.co.jp/kojin/column/shisan_kihon/column_0011.html?ranking=footer_link_01
自分も50代になったので、この記事を参考に、老後資産の準備について考えてみたいと思う。
2.よくある老後資金の準備に関するFP的アドバイス
サラリーマンの定年後を想定した資産形成に関して、FP系のコンテンツとか、FPとの個別相談では、以下の様な手法・手順で老後に向けた準備を進めるようアドバイスすることが多い。
老後に必要と考えられる資金額を試算してみる
- 定年後の総収入の試算
まず、定年後の総収入を試算する。
50歳になると送られる「ねんきん定期便」を基に、一定の年齢(例えば85歳とか90歳)を想定して、それまでに受け取れる年金の総額を計算し、それに、アルバイトとか現実的に稼げそうな収入の総額を加算する。
- 生活費の総額の試算
次に、定年後の「生活費の総額」を試算する。
月々の生活費を計算し、それに、自動車の買い替え費用とか、家の補修費等、非日常的だが発生することが見込まれる支出を加算する。
- 上記①から②を差し引く
上記①の「定年後の総収入」の試算額から、②の「生活費の総額」を差し引く。
そこで、マイナスとなるのが必要となる資金である。
- 上で試算された老後に必要な資金額を捻出するために、必要となる積立額を試算し、それに向けて積立を開始する
上記で試算された老後に必要な資金額を基に、必要となる積立額を試算する。
必要な資金額から、現在保有している貯蓄額、相続とか資産の売却益(自宅の住み替え)を控除すると、今から必要となる積立額が算出される。
そして、積立シミュレーションのサイトで、月々必要となる積立額を算出し、早速、積立投資を実行する。
このりそな銀行の記事もそうであるが、だいたい、こういった流れではないだろうか?
確かに、ロジカルであるし、何となく実行できそうな気がしないでもない。
3.しかし、この手法が気に食わない理由
上記の様なよくあるアドバイスは、理解できる。
しかし、私はこの手法が気に食わないし、これに沿って老後資金の準備を始めようとは思えない。
何故か?
第1に、この手法は無理だからである。
例えば、自分が何時まで生きるのかを想定するのは難しいし、年をとって行くと健康の問題が生じるかも知れないので、アルバイトとか定年後起業でどのくらい稼げるかを試算するのは難しい。
支出面は更に難しく、現在の生活費から定年後の生活費を正確に想像するのは現段階では難しいし、家の補修費とか、見積もるのも難しい。
それ以上に大変なのが、円安・インフレの経済下、10年後、20年後の物価水準を読むのは無理である(悲観的な想像しかできないが…)
そういうわけで、老後に必要となる資金を正確に計算することは難しいし、面倒くさい。
明るい話は無さそうなので、モチベーションもわかない。
第2に、この手法は無駄、無意味なケースも多い。
どういうことかというと、仮に、老後に必要な資金が5,000万円と算出されたとしよう。
そうなると、そもそも50代のサラリーマンが積立投資をしても到底達成できないから、無意味である。高給サラリーマンであったとしても、50代からの十数年間で積立投資によって貯められる金額はせいぜい数千万円だろう(毎月20万円、想定利回り5%、積立期間10年間で3,106万円)。一般的には、定年までに1千万円も積立で今から貯められると、上出来ではないだろうか?
このため、現実的には、足りない分を貯めるのではなく、貯められた範囲内で何とかやりくりしていくしかないだろう。
その意味で、この手法は実効性に欠けると思われる。
4.それでは、50代のサラリーマンは老後に向けてどのような準備をすればいいのか?
この点、人それぞれかも知れないが、私としては以下の様な手順で老後に向けた準備をしていきたいと考えている。
現状の収支の見直しをする
最初にやることは、現状のチェックである。
目的は、今後、いくら位の金額を積立投資できるか、どうすれば最大限、毎月の積立額を増やすことができるかを調べることだ。
現状の収支については、収入と支出に分けてチェックをする訳だが、
50代サラリーマンの場合、残念ながら、「収入」を大きく増やすことは難しい。
今更転職は厳しいし、下手に転職を考えると収入ダウンになるリスクの方が高い。
また、社内的な出世レースもほぼ見えているので、今更がむしゃらに頑張って働いたところで出世は望めない。
出来るとすれば、副業とか複業である。
こちらは月数万円単位であればやりようはある。ここは定年後も踏まえて、磨いておく価値はあると思う。
他方、「支出」面については、やりようがあると思われる。
よくある節約系の指南書とかYouTubeを見ると、携帯電話と生命保険を見直すと、月2-3万円位の節約は可能らしい。
また、サラリーマンの場合は、ボーナスがあるので、ここは見直しの余地が大いにありそうだ。ここで、満足感を失わない範囲で10万円位を節約して積立投資に振り向けると、月当たり1万5千円以上積立額を増やせるので(ボーナスが年2回のケース)、結構違って来るはずだ。
とにかく、積立投資を定年まで頑張って続けてみる
上記(1)の現状の収支の見直しによって、副業等による収入増、月々の節約とボーナスの節約を頑張って、1月当たり5万円の積立投資を、想定利回り5%で、10年間続けたならば、776万円にもなる。
ここは無理しない範囲で、黙って早く実行することだ。
60歳の定年時に再度見直しを行う
50代のうちは、とにかく頑張って、できる範囲で副業や節約で積立原資を最大化して、積立投資を継続する。
そして、60歳の定年時、或いは、そのちょっと前に、再度見直しを行えばいい。
退職金、それまでの貯金、積立投資で貯まった分を合わせてどれくらいの資産があるか、
定年後の生活費はどのように見積もることができるか?
それらを踏まえた上で、再雇用に手をあげるべきか、お気楽なアルバイト生活をするか、或いは、副業が軌道に乗れば「定年ひとり起業」にチャレンジしてみるか、検討すればいいのである。(もっとも、再雇用に手をあげるのが現実的かも知れないが…)
ここからお金を大幅に増やすのは普通は無理なので、この資産で無理なら、後は支出を見直して行くしか無いのである。
もっとも、これぐらいの年代になると、場合によっては神風が吹くケースもある。
それは、「相続」と「不動産の値上がり」だ。
例えば、首都圏で被相続人が不動産を保有していて、相続人が自分を含めて2人位だと、それだけで数千万円位は相続できるのではないだろうか?そうなると、退職金以上の金額が加算される結果となるので、これは大きい。
また、首都圏ではコロナ以降の不動産価格の急騰によって恩恵を受ける人は一定数いるはずだ。もちろん、不動産価格が全般的に上がっているので、近くに引越しして、キャピタルゲインを数千万円享受するということは難しいが、地方(田舎じゃなくて県庁所在地とか中核市レベルも含む)に引っ越すと、かなりの余裕ができる。地方移住はリスクも高く、慎重に考えるべきだが、馴染みのある実家近辺にUターンとかであれば、悪くないケースもあるだろう。
まあ、相続とか不動産価格高騰については、誰にでも当てはまるわけではないが、現状の収支を見直して、月々数万円でも浮かせて積立に回すと、定年時点で結構違って来るし、この習慣は今後も有効だと思われるので、やってみたいところである。