「終わりよければ全て良し」
定年後の悩み・問題はいろいろある。
健康、お金、家庭、趣味、地域社会との関り、そして、自分自身の「居場所」など…
こういった問題点は、定年後になってから対処しようとしても間に合わないことが多く、
50代のうちから準備をしておく必要があると考えられる。
それでは、定年後の問題を定年の10年以上も前から準備をする必要は何だろうか?
これについては、いろいろな考え方があるだろうが、私は、「終わりよければ全て良し」ということにあるのではないかと思っている。
サラリーマンにとって、定年後は人生の最終段階であり、最後に充実した暮らしが出来るか否かが大切だと思われるからである。
この点については、私が定年後の準備をするに当たって参考にしている、名著「定年後」(楠木新著)においても言及されている。
https://books.rakuten.co.jp/rb/14901610/
定年後はサラリーマン時代の肩書や年収はリセットされる
サラリーマンにとって定年後の生活が重要な理由は、定年によって、サラリーマン時代の肩書や年収が一旦リセットされることである。
60歳、或いは、65歳を過ぎても取締役として活躍できるごく一部の例外的なサラリーマンを除くと、定年前の肩書が取締役手前の本部長クラスだろうと、課長代理クラスであろうと、60歳時点(役職定年がある会社だともっと早い段階で)で再雇用になった瞬間、肩書は剥奪され、年収も半減(ひどい場合には1/3)となってしまう。
現役時代は社内であったサラリーマンとしての格差は一気に縮小されてしまうのだ。
また、日本の大企業の場合、退職金や企業年金の額は定年時点の肩書による差はさほど大きくない。
このため、60歳時点の定年時には、全員似たり寄ったりの(再)スタートラインからの出発となるのである。
そうなると、現役時代は本部長クラスまで出世し、自分はエリートだという自負があったサラリーマンはそのステータスや自信を失ってしまうリスクがあるので、そのあたりに対する対応策を考えておかないと、寂しい定年後を迎えてしまうリスクがある。
他方、現役時代は思ったような出世が出来ず、社内的には恵まれない状況にあったサラリーマンは、リセットされた後の定年後は逆転できるチャンスがあるとも言える(もちろん、定年後に他人と比較して、勝った負けたと考えるのはナンセンスであるが…)。
定年後に向けて十分な準備が出来ると、良いスタートラインに立てる
定年後の問題点はいろいろあるが、そのうち、「お金」と「娯楽」については定年準備をしっかりすれば、定年時点には良いスタートラインに立つことができるはずである。(「健康」も同様だと思われるが、私はこの面における専門性が無いので、健康面については言及できない。)
定年後の「お金」、即ち、定年時点における貯蓄額を増やしておくことは、定年前から節約等によって積立投資をしておけば、それなりの成果を上げることは可能であろう。
また、「娯楽」についても、お金をかけずに楽しめるものがいろいろあるので、定年準備の段階でいろいろ試しておけば、定年後により充実した生活を送ることが可能になるだろう。
定年時点にそれなりの軍資金(老後の貯蓄)と、充実した娯楽を持っていれば、良いスタートラインに立てるのではないだろうか?
定年後は時間とそれなりのお金がある
サラリーマンにとって、定年後の生活が何故重要かと言うと、定年後は時間とそれなりのお金がある恵まれた状況にあるからだ。
サラリーマンの場合、退職金と企業年金があるので、自営業者と比べて恵まれていると言える。そして、60歳を過ぎて再雇用の状況になると勤務時間や業務面におけるプレッシャーの面でかなりの余裕ができるし、再雇用期間も終了すると全くの自由の身となる。
そうなると、そこそこのお金があって、自分の好きな事をできる憧れのFIRE生活をエンジョイできるのである(もっとも、定年まで働くということは「Retire Early」では無いので、単にFIということであるが)。
そして、定年準備でそれなりのプラスαの老後資金を形成でき、自分が十分楽しめる娯楽を持っていたら、非常に充実した定年後生活を送ることが可能であろう。
「お金」と「娯楽」は自分の「居場所」を探すのを手伝ってくれる
前述した名著「定年後」において、著者の楠木新さんは、「お金」や「趣味」以上に、自分の「居場所」が大事であると説く。
何が定年後の自分の「居場所」となるかは人それぞれであるが、一般的には、仕事(顧問的な仕事をしたり、ひとり起業をする等)、何らかのコミュニティで存在感を発揮できること(NPOでの活躍、大学院での研究、地域社会でのリーダーシップ等)が挙げられる。
こういった自分の「居場所」を見つける上で、「お金」や「娯楽」は活躍してくれる。
例えば、ちょっとした株主優待生活をしたり、時々証券会社や信託銀行の店頭に行ったり、自分の小さなビジネスを始めたり、大学の公開講座に通ったり、娯楽を通じて仲間が出来たり、社会的接点が増えるからである。
このため、「終わりよければ全て良し」を実現するために、50代のうちに定年準備の一環として、「お金」と「娯楽」の準備をしておきたいものである。
最後に:定年準備を始めると定年後について前向きな見方が可能
サラリーマンには定年があり、フルリタイアすると、定期収入、タイトル、会社との接点が全て失われるということで、「終わった人」になってしまうというネガティブな面もある。
しかし、リタイア後においても、アルバイトをしたり、ひとり起業を始めたり、仕事を続ける事は可能である。そして、好きな事だけやればいいというお気楽さがある。
また、読書、B級グルメ、小旅行等、時間を活用して、お金をかけずに楽しめる娯楽はいくらでもある。
私自身、定年後を考えると暗い気分になっていたが、いざ定年準備を始めてみてると、定年後のポジティブな面が見えて来るし、定年準備が進捗すると相応の達成感も得られモチベーションも上がって行くことに気が付いた。
このため、サラリーマンは50歳を過ぎると、やや早いタイミングかも知れないが、前向きに定年準備を始めることはおすすめである。