定年後の最大の問題は、自分の「居場所」が無くなること
私は50歳を過ぎたので、定年後に向けて、最初に定年絡みの本を100冊以上読んで見た。
定年後の生き方、お金、仕事、趣味・娯楽、定年を扱った小説等、幅広い本を読んだ。
その中で、最も参考になった本が、楠木新さんの「定年後」である。
私はこの本を、何十回と読んで、そのポイントをノートにまとめている。
何故この本が素晴らしいかというと、定年後のお金、仕事、娯楽、家族といった個別的な問題の上位にある「自分の居場所」という問題点を深く捉えているからである。
https://books.rakuten.co.jp/rb/14901610/
著者の楠木さんは、実際に100人以上の定年を迎えた元サラリーマンに対面でインタビューを行い、その濃いリサーチに基づいて書かれているので、説得力がある。
定年後に、「自分の居場所」が無くなる怖さについては、ちょっと想像してみるとすぐわかる。
定年の日を迎えると、当日や当面の間は、送別会をいろんな知人から行ってもらったり、挨拶状を書いたり、そして、現役サラリーマン時代には味わえなかった自由を満喫したりと、悪くない日々を過ごすことになる。
しかし、半年も経つと、自由な生活は何の予定も無い日々と感じられ、会社やその関係者とのつながりもバッサリと切れてしまう。会社に属している間は、上司、先輩、同僚として、それなりの扱いを受けたり、「たまには職場に顔を出して下さい」と言われたりもするが、それらは社交辞令である。自分の仕事で精一杯の元同僚達は、退職してしまった人には興味な無いし、シビアな言い方をすると、付き合ったところで得られるものは何も無いのである。
また、家庭内での位置付けも厳しくなる。
現役、再雇用時には「給料」を運んでくれるという、非常に重要な任務があったが、完全に定年を迎えると、それが無くなってしまう。
そして、それまでは朝早くに出勤して夕方以降に帰宅していたのが、朝から晩まで家にいることとなる。そして、暇だからテレビの前に居座ったり、料理に挑戦しようと厨房に立ったりすると、家族から迷惑がられるようになる。
そうなると、家には居づらくなり、図書館に行ったり、ジムに行ったり、或いは、チェーン店のカフェに行って時間をつぶすこととなる。実際、楠木新さんの「定年後」によると、朝の図書館やジムは定年退職者の比率が高いという。ただ、本やスポーツが好きでそういうところに通うのなら良いが、「家に居づらいから」というネガティブな理由で行っても面白くなく、途中で飽きて嫌になってしまう。
配偶者が優しいと、高齢者向けのカルチャースクールや陶芸教室等を勧めてくれたりするようだが、定年後に新たに始めてみても上達は遅く、楽しんだり、馴染んだりできるかどうかはわからない。
以上が、定年後の「居場所」の問題であり、これが今後何十年も続くと考えると、結構深刻な問題である。
定年後の自分の「居場所」を見つける方法
それでは、定年後の自分の「居場所」をどうやって見つければいいかということについては、
「定年後」の著者の楠木新さんは答えを示してくれている。
https://life.saisoncard.co.jp/health/second-life/post/tokushu14/
この回答は、楠木新さんが実際に多くの定年退職者にインタビューをした結果に基づくものである。楠木新さんは、自分の「居場所」を見つけた人達は「いい顔」をしていると言う。
典型的な定年後の「居場所」には、以下の5パターンがあるようだ。
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起業
いきなり「起業」と言われるとビックリするかも知れないが、自分のやりたい仕事に打ち込むことが出来ると、上記のような問題は一発で解消することがうかがえるだろう。
起業といっても、別に大げさなものではなくて、オフィス、在庫、借入、従業員無しの「ひとり起業」で構わない。例えば、海外駐在経験が長く英語が得意であれば、オンラインで塾をやるとか、自分の特技を活かして、個人コンサルを始めるなど、こじんまりとしたwebビジネスでいいのである。
もちろんそのためには、webを用いた情報発信術や集客術等が必要になるし、ブログ、SNS、メルマガ等で集客・ビジネスをするには時間がかかるので、定年前の準備が必要である。
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組織で働く
これも意外かも知れないが、「組織で働く」とは、要するにサラリーマンを続けるということである。ただ、現役時代との違いは、自分の好きな業務、得意な業務を選択できることである。(他方、自分の得意な分野じゃないと採用されないと思うが。)
例えば、経理、人事労務、IT、製造技術関係等で専門性があれば、「顧問」とかアドバイザー的な仕事を、中小企業等で行う場合である。年収は現役時代よりも大きく下がるかも知れないが、お金のためではなく、自分の特技・強みを活かして働くというやりがいがポイントなので、この点は問題無い。
60歳を過ぎた段階での転職は非常に厳しいので、コネ・人脈を通じた転職活動が重要だという。この「組織で働く」をいう選択肢を選びたいのであれば、こちらも起業同様に、定年準備として現役サラリーマンのうちに対応を始めておく必要がある。
また、自分の「居場所」というのは、お金の問題では無いので、NPOのボランティアで自分の特技を活かして貢献するというのもある。例えば、上のリンクで楠木さんが紹介されているように、自分の経理の知識・経験を活かして、NPOの事務局長的なポジションにつくというのが、それである。
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趣味
これは、サラリーマン時代の仕事とは別の、自分自身の特技を活かすパターンである。
具体的には、子供たちに剣道や書道を教えるとか、大道芸を幼稚園とかで披露するといったものがある。
喜んでもらえる様な趣味・特技を持っていると、新にいろいろな人と交流できるし、感謝もされ、やりがいを感じることができるということだ。
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地域社会
これは、都市部よりも、地方の方があてはまり易いかも知れない。
地方、特に農村部に行くと高齢化が非常に進んでおり、60代でも相対的に「若手」扱いされ、消防団、お祭り、環境整備、農作業等、いろいろな面でひっぱりだこだったりするそうだ。
いろいろ難しい面もあるようだが、地方移住をして地域社会に上手く溶け込むと、自分の「居場所」の問題は解消するだろう。
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学問
これも、③の趣味や特技の一貫と言えるかも知れないが、何か探求したい学術分野があれば、こちらも自分の「居場所」になるそうだ。
上のリンクの楠木さんの話によると、これには、大学や大学院で本格的に勉強するとか、高齢者大学やカルチャースクールで興味のあることに取り組むなど、いろいろあるらしい。
楠木さん自身、高齢者大学で70歳位の受講者に教えたりすることがあるそうだが、みんな非常に熱心とのことである。
以上が、自分の「居場所」となる典型的な5パターンであるが、
そのためには、「好奇心」と「主体性」の2つが必要とされる。
「好奇心」と「主体性」を持つためには?
「好奇心」と「主体性」を持てと言われても、抽象的なので、具体的にはどうすればいいか、自分なりに考えてみた。
要は、頭と身体の両方を働かせることなのではないかと思う。
この点、私が定年準備として推奨している「お金(老後資金)」と「娯楽」の準備を50代から始めるのも、良いのではないかと思う。
何故なら、そのためには、新しい知識(節約や資産運用等に関すること)をインプットして、行動(FPや金融機関に相談したり、娯楽のためにブックオフで本探しをしたり、B級グルメ店に足を運ぶ等)することにつながるからである。
定年後も自分の「居場所」を持ちづけるために、やっておきたい5つのこと
これは私の例に過ぎないが、「好奇心」と「主体性」を持つために、定年準備の一環として、以下の5点を始めている。
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起業準備
起業といっても、私が考えているものは「ひとり起業」であって、オフィス、在庫、借入、従業員を持たないものである。
ただ、起業をするには、(1)売るものと(2)集客方法が必要となるので、
そのためのインプットや体験、ブログ、SNS、メルマガにおける情報発信と集客(収益化)スキルを習得しておく必要がある。
そのためには、少なくとも数年間の準備と100万円程度(そんなに要らないかも知れないが)の軍資金が必要となる。独学だけでは厳しいので、有料の個人コンサルやセミナーに参加する必要があるので、ある程度の資金は用意しておいた方がいい。
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自分のキャリアの洗い出し
現役サラリーマン時代と定年後との違いは、定年後は自分の好きなこと・得意なことに特化すればいいということである。苦手なもの、やりたくないことはなるべく避けた方がいい。
そのためには、一度、自分のキャリアを振り返ってみて、専門性や特技を改めて見直しておいた方が良い。
これは、ハードスキルとソフトスキルの認識と言っていいかも知れない。
ハードスキルというのは、営業、経理、人事労務、法務、IT、語学力といった専門スキルや経験である。
ソフトスキルというのは、プレゼン力、対人交渉力、面倒見の良さ、忍耐力、行動力といった主に性格面に起因する強み・特性である。
ストレングスファインダー等のアプリを参考にするのも良いが、私は個人的には、そっち系はあまり好きでは無いので、第三者(有料コンサルでもOK)に見てもらうのが良いかも知れない。
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娯楽の実践
娯楽といっても、定年前から準備をしておいた方がいい。
定年後にいきなり始めてみても、好きになれるとは限らず、楽しめないかも知れないからだ。
従って、50代のうちから定年準備ということで、自分に合いそうな娯楽をいくつか抽出し、始めておくのだ。私の場合は、読書(ブックオフ等で安く買う)、B級グルメスタンプラリー(カレーとか、うどんの名店を10か所訪問すること)、地元の鉄道を使った小旅行(例えば、江ノ電の全駅制覇)あたりを徐々に始めている。
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朝活
これは朝の早い時間帯(6~7時等)を利用して、頭が冴えている間に、
起業準備のコンテンツ作成やインプットをしたり、前日の振り返りと今日の計画をレビューしたりすることである。
定年後、良くないパターンとしては、朝遅く起きたり、ひどい場合には二度寝して、だらだらと過ごしてしまうことである。
現役サラリーマンのうち、平日は難しいかも知れないが、休日も早起きして朝活に充てる習慣を作っておくと、定年後にもその流れで行けると思われる。
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メモの活用
少し前に「メモの魔力」(前田裕二著)がベストセラーになったが、
この手の本は他にも過去にベストセラーになったものが何冊もある。
デジタル化が進んだペーパーレスな世の中になっているが、紙のメモ(ノート)を使うことは、それなりのパワーがあるのだろう。
これは、上記①の起業準備、④の朝活とも関連するのだが、
紙のメモを使って、自分の夢・やりたいこと、その日にやるべきこと等を書いてみることは、それなりの効果があるのではないだろうか?
その際は、落書き帳にならないようにするため、モレスキンのような高価なノートを使ってみるのもいいだろう。
以上が、私が現在進行形でやっている5つのことであるが、それらがどのような効果をもたらしているかについては、また、後日検証していきたいと考えている。