定年間際に義務教育の子供がいる場合のお金の問題
2025年になったので、新年会ということで、大学同期の友人達数人と集まった。
大学同期なので、全員、50歳を過ぎていて、定年後のこともいろいろと気になり始めている。
その会合で、結構盛り上がったのが、友人の会社の先輩が定年間際であるが義務教育の子供がいて、老後のお金の問題で苦労しているようだという話である。
その友人の先輩というのは、既に役職定年にも達していて57歳を過ぎている。
その会社の定年は60歳で、その後は65歳まで再雇用制度があるという、よくある大企業のパターンである。
60歳の定年後を見据えた転職活動をしているが苦戦中
その会社も60歳以降、再雇用になると年収は大幅に減少し、半分以下となるそうだ。
このため、その定年間際の先輩は子供の教育費が定年後も負担し続ける必要があるので、
今の会社の再雇用よりは高収入が期待できる企業への転職を目論んでいる。
例えば、定年が65歳の会社とか、会社の格は落ちても執行役員・顧問のような幹部として再雇用よりも高給が期待できる会社である。
その定年間際の先輩は、長年、広報/PR系の職種に就いており、それなりの専門性は持っているということだ。
今の会社は業界大手で、専門性や経験は十分あるので、最初はそれなりのポジションがいくつか見つかるだろうと思っていたが、転職活動は非常に難航しているという。
何故その先輩が、その年齢での転職活動に楽観的だったのかはよくわからないが、その先輩は転職経験が一社も無いそうだ。従って、転職市場に関する理解が不十分だったのだろう。
確かに、転職において業務経験や専門性は非常に有利な武器であるが、転職活動において年齢も非常に重要な要素である。社内的に専門性も業務経験も十分で、優秀という評価の人材であっても、役職定年、60歳の定年と、年をとるに連れ戦力とされなくなっていくのである。その様な状況で、わざわざ社外から同年代や60歳以上の人を採ろうという気にはならないというのが、悲しいながら、現状である。
60歳の定年後は大幅な年収減を想定した上で、ファイナンシャル・プランニングを考える必要がある
新年会で集まった友人達も、その定年間際の先輩の転職活動は難しそうで、結局は再雇用を選択せざるを得ないということで一致した。
そうなると、60歳以降は大幅な年収減となるので、今からその先輩はどのような手を打つべきか、余計なお世話であるのだが、程度の差こそあれ、自分達も他人事ではないので大いに盛り上がった。
住宅ローンはどうするのか、車のローンはどうなのか、企業年金はどうなのか、NISAとかを使った老後資金は貯めてそうなのか、再雇用が終わったあと(65歳以降)はどうするのか、学資保険や変額個人年金保険とかはどうなっているのか、相続はどうなのか等、とにかくいろいろな論点が錯綜し、なかなか先輩のファイナンシャル・プランニングに関する解決策がまとまらない。もっとも、その新年会の当事者ではなく、資産や負債等に関する情報が不十分な中での話なので仕方が無いのだが…
大きな問題点は、老後資金の蓄積と子供の教育費とをどうやって両立するか
年収が大幅減という逆風の中で、老後資金を蓄積しながら、どうやって、子供の教育費を捻出して行くのか?老後資金と教育費の2つをどうやってカバーしていくのかというのが、ファイナンシャル・プランニングにおけるメインの論点であろう。
これについては、大きな視点で順序立てて考えていく必要があろう。
まず、ストック(資産)面と、フロー(収支)面に分けて、整理して考えなければならない。
まず、60歳の定年時点、65歳の再雇用の終了時点の資産を考える。
この点、幸い大企業であるので、60歳時点で退職金は3000万円位はもらえるそうである。
そして重要なのが、現時点での貯蓄額である。
出来れば1千万円位あればいいのだが、これはその先輩の消費性向次第である。
これが1千万円以上か、100万円未満かで、老後は大きく違って来る。
後者であれば、貯蓄というストックの問題だけでなく、お金の使い方が粗い?可能性もあるので、定年後のフローの対策も苦労しそうだからである。
それから、こちらも非常に重要なのだが、相続によって得られる資産がどれくらいあるかである。相続については、本人だけでなく、配偶者の方もあるので、どちらかが相続によってまとまったお金が入れば全然違ってくる。もっともこれは友人の先輩の話なのでそういった事情はわからないし、一般論としても、あまり相続はいつ発生するか、最終的に(相続税等支払後)どれくらい手にすることができるのか不透明なところもあるので、期待し過ぎない方がいい。
資産の状況を確認すると、次にフロー(収支)面のチェックである。
まず、収入面であるがここは楽観的な期待は出来ない。
60歳以降に、突然好条件の転職話が舞い込むはずはなく、再雇用の収入を想定する他ない。
アップサイドがあるとすれば、副業である。
再雇用の場合には、時間もあるし、立場もお気楽なので、副業は現役時代と比べてやり易い状況にある。ここで月5万円でも余分に稼げれば、結構違って来る。
フロー面でのポイントは、「支出」の方であり、いかに「節約」できるかがカギである。
とは言え、子供の教育費の節約は難しいところがあるので、ここが難しいところである。
子供の大学進学時等、特に教育費がかかる時期においては、赤字も想定され、そこは貯蓄を切り崩すことになる。そこで、どれくらいの貯蓄の切り崩しが可能なのかを吟味する必要がある。
このため、教育費以外で節約可能な項目を幅広くチェックする必要があり、
住宅ローンの見直し、車の見直し、携帯電話代の見直しから、出来れば、変動費面の節約も可能な範囲で対象とした方がいいかも知れない。
ここでも、生命保険代のカットというのが節約の主役であるが、子供の教育費を保険でカバーする場合も考えると、なかなかカットしづらいのが辛いところである。
収入の大幅減はどうしようもないので、如何に節約するかが重要なので、ここはアプリなり紙の家計簿/ノートをつけるなり、きっちりした方がいい。
他方、老後資金もきっちり準備して行く必要がある
フローについては、子供の教育費が大きな制約要因になるし、大学進学時には赤字と貯蓄の取り崩しもやむを得ないかも知れない。
しかし、子供の教育費対応だけでなく、老後資金の確保の問題も併せて検討する必要があるのが、このケースのファイナンシャル・プランニングの難しいところである。
NISA、iDeCo等、既存の制度を駆使しながら、老後資金について積立投資等も研究して、実行することが求められるだろう。
それから、FPには嫌われがちな生命保険であるが、現状の予定利率等を勘案すると、使った方が現実的なケースもあるかも知れない。
結局、資産のシミュレーションを一度やってみるのが良い
新年会での話は盛り上がったが、結論は出ない。
ある程度具体的な数値が無いと、検証しようが無いからである。
本件のように、定年間際なのに義務教育の子供がいるような難しいケースでは、
資産や収支面を具体的に入力して、資産のシミュレーションをやってみるしかないだろう。
現状の資産を前提に、子供の教育費の支出をいくつか用意して、65歳時、70歳時、子供の大学卒業時とそれ以降の資産の推移をアプリやソフトを使って分析するのである。
そうすると、どれくらいの生活(支出)をすれば、今の資産でもやって行けるのか、
厳しい場合はどのような対応が必要なのか、具体的な論点が数値で示されるからである。
友人の1人は、マネーフォワードが良いと言っていたが、FPに相談してみるのも良い。
いずれにしても、定年後も長期間、子供の教育費がかかる場合には、慎重な分析と計画を立てることが重要だ。