定年後の「ひとり起業」と、やってみたい理由について

何故、定年後に「ひとり起業」に挑戦したいか?

 私は50代のサラリーマンで、定年準備をしている段階である。

そして、定年後には「ひとり起業」をやってみたいと考えている。

「ひとり起業」とは、その名の通り、他の人を雇うことなく、自分1人だけでやるビジネスである。私の場合は、オフィスは持たずに(シェアオフィスは考えている)、借入も無しで、在庫や仕入れが不要で、利益率の高いネット系ビジネスを想定している。

 そうすると、ビジネス開始時における資金は特に不要であるし、ビジネス起ち上げ後も、費用が掛からず、特にリスク無くして挑戦することが可能だ。

 再雇用も含めて会社を定年退職した後は、全く働かないという選択もあるし、アルバイトをやるとか、顧問的な仕事を行うとか、いろいろな選択肢がある。その中で、私が「ひとり起業」に挑戦したい理由は以下の通りだ。

 第1は、定年後も自分の「居場所」を持つことができることである。

フルリタイアすると、しばらくの間は自由を謳歌できるが、半年、いや、1か月も経つと飽きてしまい、何にもすることが無いという事実に直面することとなる。

 仕事も同僚も収入も名刺も付き合いも無くなり、ずっと一日中、家にいると家族からも疎まれてしまう。このような自分の「居場所」が無くなることは、お金や娯楽が無いこと以上に辛いこととも言われており、定年準備段階で定年後の自分の「居場所」を見つけておきたいものである。

 この点、例え小さい、アルバイトに毛の生えたような収入水準だとしても、「ひとり起業」が出来ると、仕事もあるし収入もあるし、肩書(当該「ひとり起業」の)もあるし、交流もある。そして、同時に新たなやりがいを持つことができ、れっきとした自分の「居場所」が出来るのである。

 2に、小さくても「ひとり起業」を営むということは、個人事業主になるということである。大きな組織で働くサラリーマンとは全く異なり、全てを自分1人で意思決定でき、その実行も自分自身が実施する。理屈の上では収入も青天井だ。そして、税金も経費が使えたり、サラリーマン時代のそれとは大きく異なる。

 他方、仕事は黙っていても降りてくることは無く、全て自分が取りにいかないといけないし、上司、部下、同僚が助けてくれるということもない。もちろん、安定収入も無い。

 それを面倒くさいと思うか、新鮮で面白いと思うかは人それぞれだろうが、1回きりの人生で、サラリーマンと個人事業主の人生二毛作を経験できるのは、私にとって非常に惹かれるものがある。 

サラリーマンと個人事業主の稼ぎ方の違い

 私は今年の1月に、「ひとり起業」に関して、長年ウェブ系のコンサルを営む個人事業主の人からコンサルを受けたことがある。その際、気になるのが、どれくらいの売上を立てることが出来るか、要は、売上計画についてである。

 そもそも、まだ始めてもいない「ひとり起業」の売上想定の話なのでbad questionなのは認識していたが、やはり、長年サラリーマンしかやったことが無いと、ここが一番気になるところである。

 それに対する答えは、非常に印象深かったのであるが、そもそも前提として、「売上自体は自分自身で作れるものだ」ということだ。

 ここで想定しているのは個人コンサル的なビジネス(定年準備、定年退職者を対象としたFP(ファイナンシャル・プランナー)ビジネス)なのだが、「とにかく自分でサービス内容と価格を決めて、やってみること。結果、売上ゼロに終わったとしても、ニーズが無いとわかったこともデータとして有効である。個人コンサル的なビジネスは、コストも在庫も無いので、いろいろと試行錯誤して、売上を成立させるサービスと価格帯を見つけて行くのが個人事業主である。」と言われたのだ。

 サービス内容を変えたり、価格を下げたりするなどしていけば、必ず均衡点は見つかる、即ち、収益源は見つかるという考え方なのである。そのため、試行錯誤して均衡点を見出すまでの「時間」こそが、個人事業主の「コスト」なのであるということも教わった。

 そして、年商については、それは自分自身が目標を立てて、そこから逆算するということを教わった。例えば、年商2千万円欲しいと思えば、そこから逆算して予算を策定する。まず、12で割って1か月あたりの売上目標を計算する。年商2千万円であれば、月当たり166.6万円、まるめて170万円とする。

 次は月170万円を、どうすれば実現できるのかについて、自分自身が提供するサービスと単価を基に逆算する。例えば、個人FP(ファイナンシャル・プランニング)コンサルを2時間5万円で提供するとする。月に34件受注できれば目標達成である。約9/週、2件弱/日(週5日稼働した場合)というイメージである。

 そんなに、個人コンサルを受注できないと思った場合には、他のサービス/プロダクトとの組み合わせを考えればいい。例えば、売上の半分を個人コンサルで稼ぐとした場合、月に85万円の売上でいいので、月当たり17件となる。1日あたり1件弱でOKである。

 すると、残りの85万円をどうやって稼ぐかを考えればいい。

例えば、2時間5万円の個人コンサルよりも集客し易い、前段階のビジネスとして、少人数向けセミナー(リアル開催)と、ZOOMを使ったオンラインセミナーを考える。

これらの単価を1万円とすると、月に80人を集客できればOKである。

 月に80人の集客が難しそうであれば、不足しそうなところは、メルマガの中でコンテンツ販売を考えればいい。例えば、単価980円のものと4,980円の2種類を用意して、合計100部位売れると、そこそこの売上となる。

 もちろん、以上の様に、希望した売上が実現する訳では無いが、その場合に、単価を下げる代わりに稼働率を上げる(回数を増やす)、サービス内容を改善するといった試行錯誤が求められることになる。

 サラリーマンの場合は、売上(給与収入)を増やしたければ、それを実現できそうなポジションまで出世するか、転職するかのみを考えれば良い、ポジション探しのゲームであったが、個人事業主になると、全く異なるゲームとなる。

 以上の様な話を聞いて、私は、「起業でそこそこ稼ぐのは結構大変で、誰にでも出来るものではないですね。」と言うと、「その通り。起業と言っても2パターンある。1つはビジネスモデルを作ること、もう1つは下請け。前者は、専門性とセンスが無いと無理。」と、その個人事業主の方からの返答が印象的であった。 

個人事業主(コンサル系)と価格の決定方法

 決まった価格が特に無い、個人コンサル系のビジネスを考える場合、非常に重要になるのが価格設定である。「価格を下げれば需要は増える」という基本的な経済法則が当てはまらないのがこの世界であり、そこに難しさとチャンスがある。

 私は「ひとり起業」について、複数の方からコンサルを受けたが、個人事業主の価格設定については非常に興味深い話をいろいろと聞くことが出来た。私自身の記憶喚起も込めて、まとめてみると、以下の感じである。 

  • 価格設定が低すぎて、自分自身で無理ゲーに陥るケース

 これは、ブログを中心に月に500600万円も稼いでいた方から教わった話である。

個人事業主として独立したての頃は、とにかく不安で売上を立てたいし、まだ、実績が無いので低単価のビジネスに走りがちである。

 例えば、個人向けのファイナンシャル・プランニング的なセミナーを想定しよう。

この場合、週1回、20人位が収容可能な貸会議室を借りて、2時間程度のセミナーを企画した際、セミナーの受講料を3千円に設定したとする。そうすると、売上はマックスで、20人×3千円×月4回=24万円にしかならない。ここから、会議室のレンタル料を引くと、収益は減り、そもそも、毎回満員に出来るのかという疑問もある。

 セミナー以外に、個人コンサルとかコンテンツ販売で稼ぐことが出来ればいいが、そうだとしても、この状況だと、上手く行っても月商50万円程度ではないだろうか?

 定年後のビジネスであればいいかも知れないが、それにしても、これぐらいの売上しか見込めないなら、サラリーマンをやっていた方がいいだろう。というか、独立を考えるには時期尚早である。

 しかし、現実的には、これと類似したケースで失敗する人達は後を絶たないそうである。

敗因は、低単価でしかセミナーを開催できないような状況で独立に踏み切ることが問題で、もう少し自信を持って価格設定を出来るようになるまで、ブログやSNSでのフォロワー/集客力を付けておくことが必要なのである。

 上記のケースだと、例えば、セミナーの受講料を1万円にして集客できれば、定員マックスまで集まらなくても、月に50人集めることが出来れば、後は、個人コンサルとかコンテンツ販売によって、やっていける程度の売上は可能になるだろう。

 そもそも、個人コンサル型ビジネスであれば、経費は掛からないかも知れないが、レバレッジも効かないので、薄利多売型のビジネスモデルはマッチしない。 

  • 自分の理想の価格を設定することの意義

上述のブログで成功された方によると、どれくらい実際に集客できるかは別として、まずは自分の理想とする価格を設定したら良いという。

 例えば、先ほどの個人向けファイナンシャル・プランニングのセミナーの場合、セミナー単価で受講料を2万円で集客できれば、理想的だとしよう。そうすると、月に延べ50人集客できると、それだけで売上が100万円に到達できる。

 そうすると、「受講料2万円」に合わせて、全てを変えていくことになるという。

まず、外形的というか、包装紙的なところから、変化する。

会場もそれなりの立地や雰囲気の場所を選ぶようになる。

そして、紙の資料の見映えや封筒類のデザインも意識するようになる。

更に、自分自身の身だしなみ、服装とか話し方も気遣うようになる。

 次は、セミナーの中味自体の改善も考えることとなる。

例えば、時間を倍の4時間にして、午前2時間、午後2時間にする。そうすると、自ずとセミナーの中味も違ってくる。そして、午前と午後との間に、見映えの良い弁当を提供すると、「午前と午後の2時間、弁当付き」となると、「受講料2万円」も正当化されていくように見える。

 更に、長期的な話ではあるが、「受講料2万円」での集客をキープしようとすると、セミナーの中味もどんどん磨いていく必要がある。そうなると、自分自身のインプットやスキル上げを意識するようになるので、自分自身がコンサルを受けたり、情報収集を強化することが期待される。そうして行くことで、自分自身のブランディングが強化されていく。

 このように考えると、個人コンサル系での起業は、「高単価」での集客を実現できるか否かで勝敗が決まると思われる。 

  • 1人でも受講者が出来たら、そこに「市場あり」と割り切る方法

 これは、先ほどの②の「高単価自体が、プロダクト(セミナー)と自分自身の価値を高めることに繋がる」という美しい話であったかも知れないが、この③の話は、もっと割り切った話である。

 これは、また別のウェブ系コンサルの方から教わった、価格設定に関する話である。

この方によると、価格と中味の関連性とは別に、1人でも受講者が出来たら、それは市場でついた価格であり、正当なものであるという考え方である。

 これは、まずは自分の理想の価格で集客してみて、そこで1人でも集客できれば、とりあえずはOKということである。あとは、価格を下げることは考えずに、如何にして集客力を高めるか、ブログであればPVSNSであればフォロワー数、そして、最終的にはメルマガ会員数をどこまで増やせるか次第であるという考え方である。

 ここには、セミナーの価格の正当性をどう考えるかよりは、顧客基盤の拡大を次のステップとして進めて行くという方法である。

 反対に、例え価格が高めだと考えても、そのビジネスを継続するのがしんどいと感じるならば、そもそも、そのビジネスはやるべきではないという考え方である。

 サラリーマン的な発想だと、この考え方は直感的に受け入れにくいところがあるが、何となくわからないでもない。いずれにしても、個人ビジネスを始めるのなら、価格設定が非常に重要で戦略的なものだということである。 

※おまけ:価格を極限まで高める方法

 最後に余談であるが、最近読んだ本の中で価格設定に関する面白い話があったので、紹介したい。それは、西野亮廣さんの「夢と金」というベストセラー書の中の話である。

https://www.gentosha.co.jp/book/detail/9784344040502/ 

ここでは、フェラーリとか、飛行機のファーストクラス等を例に、いろいろな価格設定の話が展開されているが、その中でモナリザの絵の話が面白かった。モナリザの絵の価格は、推定ではあるが、何と1千億円以上の値が付くと言われている。

 西野亮廣さんによると、価格の公式は、「知名度―供給量」であり、

モナリザの絵の場合は、10億人以上の人が知っているが、供給量は最小の1である。

 モナリザの場合は芸術作品で元々量販できないものだが、この考え方はフェラーリやパテック・フィリップの様な超高額品のビジネスで応用されているという。

 フェラーリにしても、パテック・フィリップにしても、企業なので売上増の呪縛があり、供給量を減らすわけには行かない。実際、パテック・フィリップにしても年間数万本は生産している模様で、工芸品とはちょっと訳が違う。そうすると、企業が出来ることは、「知名度」を極限まで高めることである。西野さんは、これを「買えない人を如何に多く作るか」と書かれていた。この説明で、私は、何故パテック・フィリップがやたらに広告宣伝をしていることが理解できた。

 反対に、「知る人ぞ知る」によって、供給量を絞って、高めの価格設定で売ろうとするのは、実は難しいということになる。

 これは、個人ビジネスにおいても参考に出来そうで、やはり自分の理想とする価格設定でビジネスを展開したければ、ブログのPVSNSのフォロワー、メルマガ会員数を頑張って増やすべきだということである。やはり、楽して高単価でのビジネスは展開できないのである。 

プロダクト(商材)の作り方

  •  「何をやればいいかわかりません」はNG?

 サラリーマンが起業を考える場合、そもそも、どんなビジネスをやればいいかわからないという悩みを持つ人が一定数いるようだ。「やりたいことが明確化されていないのに、何故起業?」という疑問は当然生じるが、とにかく「起業」をやりたいという憧れを持つ人は少なからずいるということだろうか。

 しかし、結論的には「何をやればいいかわかりません」と相談するようでは、起業はまだ始める段階ではないらしい。起業コンサルの実績のある人も、「何をやればいいかわかりません」と相談されても、コンサルは受けられないという。それは、すぐに思考停止をするようでは、とてもビジネスを始めても、壁にぶち当たった段階で停滞してしまうからだ。

 やるべきことがわからなくても、とりあえず仮説を立ててやってみて、試行錯誤しながら前に進める思考力と行動力が求められるということである。

 上の起業コンサルが言うには、何か課題をつきつけられて、すぐに「わかりません」と言うようでは、サラリーマンとしても及第点には達しないと、この点はシビアである。 

  • 切り口としては、「本業」と「趣味・特技」の2つがある

 それでも、何とか起業のネタを見つけてやってみたいという場合には、そのヒントとして、

「本業」と「趣味・特技」の2つがあるそうだ。

 「本業」というのは、サラリーマン時代に培った経験とスキルに基づくもので、例えば、IT畑の人であれば高齢者向けのスマホ・パソコン講座、海外駐在経験が豊富な人であれば英会話といった具合である。

 ただ、「本業」関係でなくとも、「趣味・特技」を活かした起業にも勝機はあるそうだ。

例えば、DIYが得意な人の場合、家具・木工や庭造りや家屋の簡単な修繕関係のビジネスを手掛けるというのがある。この手のものはInstagramとかで集客できるので、一定数のフォロワーが集まっているのならば、アメブロと絡めてみると面白い。

 また、お笑い芸人のヒロシさんの様に、キャンプ・アウトドアが得意であれば、そちらのレッスンとかグッズ販売という切り口もある。

 或いは、女性の場合であれば、若干スピ系となるが、「占い」は人気アイテムである。

星占い、姓名判断、タロットとか、人を惹きつけることができればチャンスはあるだろう。

 もっとも、このあたりはSNSとかを使って地道に集客(フォロワー集め)をしておかないと、起業しても認知されないので、起業スタートまでには時間が必要である。 

  • ブログ、SNSで集客準備をする

 やるべきことが決まれば、次はブログ、SNSを使っての集客活動である。

アメブロであれば、フォロワーを千人集めることができると最低限の集客基盤は出来るという。

 SNSについては、男性はInstagramは難しいかも知れないので、X(旧Twitter)とか、Threads、フェイスブックあたりを使うのがいいだろう。 

ただ、ブログもSNSもフォロワー(PV)をそこそこのレベルまで増やして行くには、結局、記事投稿数と継続能力がカギとなる。文章を書いたり、情報発信をすることが苦手という人は向かないかも知れない。

 反対に、文章を書くのが得意で、毎日続ける粘り強さに自信があれば、可能性はあるはずだ。行き詰れば、個人コンサルを受けて、やり方を改善するという方法もある。

 個人の情報発信を起点に起業を考える場合には、実はプロダクトよりも、こちらのSNS等での集客の方が大切であるという話がある。今でもブログで月収300万円以上を稼いでいる、辣腕ブロガー(アフィリエイター)によると、「集客(月間PV10万レベル)さえできれば、後は何とでもなる」と豪語している。そういう意味で、プロダクト、自分の提供できるサービスに少々自信が無くても、ブログやSNSでの情報発信が得意であれば、十分チャンスはあると思われる。

 このあたりの、情報発信と集客については、また別の記事でも考えていきたい。 

将来的には、「ひとり起業」支援企画をやってみたい

 私自身、まだ「ひとり起業」で成功した訳でも何でも無いので、時期尚早なのだが、将来的には、「ひとり起業」の支援企画をやってみるのが夢である。

 50代の定年準備をしているサラリーマンや60代の定年退職者で、「ひとり起業」を考えている人達に対して少人数向けセミナーを開いたり、或いは、お茶会的なものを開催するのである。そうすると、お互いに良い刺激になりそうである。

 私は今後、ブログ開設(ワードプレス)、Threads開設、メルマガ開始という順で進めて行く予定である。このあたりの進捗については、後日発信する予定である。