定年準備、老後資金捻出に向けた「月1万円」の節約術

50歳を過ぎると、老後資金を考える必要がある

 サラリーマンの働き盛りの3040代は、お金のやりくりも大変な時期で、住宅ローンや子供の教育費、会社関係の交際費等、支出が多く、十分な貯蓄をする余裕は無いかも知れない。

 それらは、50歳を過ぎたからといって、急に状況は変わらないだろう。

しかし、50代は定年後の老後資金等を考えるにあたって非常に重要な期間であり、ここで頑張っておかないと、60歳を過ぎてから間に合わせるのは非常に難しい。

 そこで、出来る範囲で構わないので、50歳を過ぎると老後資金の準備を始めたいところである。 

1万円の節約と積立投資の意味

 老後資金の準備にあたっての最低限の行動は、月1万円を節約し、それを積立投資に振り向けることであろう。

 ただ、「月1万円の節約と積立投資」を始めたところで、どれくらいの意味があるのかと疑問に思う人もいるだろう。

 どれくらいの意味があるかについては、具体的な金額を見た方がわかりやすいだろう。

例えば、月1万円を節約によって捻出し、積立投資に回し、想定利回り/年を5%とした場合、10年後には155万円となる。ちなみに、銀行預金の場合は、最近は金利上昇傾向にあるものの金利0と仮定すると10年後には120万円である。

 この数字を見ると、「どうでもいい金額ではないが、あまり老後資金の足しにはならないかも知れない」と思われるかも知れない。

 しかし、「月1万円の節約と積立投資」を継続できると、以下の2つの理由でその効果は決して小さくはないと思われる。

 第1に、「月1万円の節約」ということは、ある意味、赤字ではないということである。

大手のサラリーマンの場合、年2回のボーナスがあることが多く、それを月々の生活費に回している人も結構いるだろう。カードのボーナス併用払いなどが典型である。

それは、毎月の収支が実質赤字ということであるが、定年後(というか、60歳で再雇用になると通常ボーナスは無い)にはボーナスが無くなるので、そのような習慣を続けていると、定年後に破綻してしまう。

 その意味で、月1万円でも浮かせることができるというのは、月の収支の赤字を回避するという意味でもあるので、その意義は決して小さくはない。

 そもそも、50代になって、月の節約目標が「1万円」というのはそれ自体で現状カツカツであることがうかがえるので、早期に月々の収支を黒字化させることは大きいのである。

 2に、「月に1万円の節約と積立投資」を「継続」することが出来ると、途中から、金額を「月に2万円」或いは「月に3万円」に増額することは決して難しくないからである。

 50代のサラリーマンの場合、そこそこの収入はあるだろうし、年2回のボーナスがある人は多いだろうから、ボーナスの支出の見直しも合わせると、月に23万円の節約は決して難しくは無いだろう。

 そうすると、例えば、月3万円を想定運用利回り5/年とした場合、10年後には466万円になる。(利回りゼロのタンス預金なら360万円)。月3万円位なら、再雇用になっても継続可能な水準なので、上の条件で15年間続けた場合には、802万円となる(タンス預金なら540万円)。10年を超えると、結構、積立投資の複利効果が効いてくるので、そこそこの金額となる。

 以上の様に、出発点として、たとえ「月1万円」でも節約&積立投資を始めることには意義があるのである。 

1万円を捻出するための節約術

 さて、月1万円でも節約&積立投資を始めるのは大きいということが確認できると、

次は具体的にどうやって月1万円を節約するかである。

 節約については、①固定費の節約と②変動費の節約がある。

両方併用できれば効果が大きいのであるが、一般的には、固定費の節約の方が簡単で効果が大きい。従って、固定費の節約から見てみよう。 

  • 固定費の節約で月に1万円を捻出する

 固定費には、一般的に金額が大きい項目として、家賃(住宅ローン)、自動車維持費用(自動車ローン、保険代、駐車場代等)、生命保険代、携帯電話代、水道光熱費(基本料金の部分)等がある。

 家賃や住宅ローンの見直しは、それに要する費用(賃貸だと引越代、ローンの場合は手数料等)が結構掛かるし、手間もかかるが、上手く実行できると、月に1万円どころか3万円以上の節約も可能であろう。住宅ローンの見直しの場合は、家賃の見直しと違って、住まいの水準が下がることは無いので、面倒くさいかも知れないが検討する価値は大いにある。

 自動車維持費用の見直しで可能性があるとすれば、自動車保険代だろうか?

ネットの保険に切り替えると一定の効果はあるかも知れないが、それだけでは月1万円には到底届かない。効果があるとすれば、今それなりのグレードの車に乗っている場合には、次の買い替え時にグレードを落とした車に買い替えることである。もっとも、車には趣味的な部分もあるので、それによってストレスが貯まれば意味が無いので、この点は慎重に考えた方がいいだろう。

 その意味で、固定費の節約の主役は生命保険代である。

大手のサラリーマンであれば、月に23万円払っている人も珍しくないという。

その場合には、保障内容の見直し等を行うことによって、それだけで一発で月に1万円を浮かせることが可能である。

 ほけんの窓口やほけん百花に行くのも良いが、利ザヤの厚い商品を勧められるリスクもあるので、まずは独立系のFPとか、生保に詳しい金融機関の友人や親せきに相談するのが良いだろう。

 生命保険の見直しと合わせて、是非検討して欲しいのが、携帯電話代の見直しである。

これは別に格安サービスに切り替えなくても、例えば、ドコモのeximo(エクシモ)から、ahamo(アハモ)に切り替えれば、月に数千円の節約が可能となる。夫婦二人で行うと効果倍増である。50代のサラリーマンの場合、若い人達と違ってスマホ命というような生活でも無いだろうから、十分見直しの余地はあると思う。

 その他の固定費の見直しの項目としては、水道光熱費の見直しがある。

これは、電気をマメに消すという変動費的な部分ではなく、基本料金の部分である。

具体的な方法としては、楽天でまとめるという様な方法である。

 固定費については、対応法がそれほど難しくなく、かつ、効果が大きいのは生命保険代と携帯電話代の見直しなので、まずはここから始めるのがいいだろう。これが出来れば月に1万円の節約は達成できたようなものである。 

  • 変動費の節約について

 変動費の節約は、固定費の節約と比べると、難易度は高く、上級者向けである。

何故かというと、毎月決まった額が発生するわけではないので、最初に何らかのアクションを採ると、後は自動的に節約効果が継続するということが期待できないからである。

 例えば、交際費の節約ということで、特に必要性の高くない会社の飲み会を欠席して5000円を浮かせたとしても、それは毎月、発生するとは限らないからである。

 また、食費、外食費、趣味・娯楽といったところは、節約によってストレスが生じるリスクが固定費の節約と比べて高いからである。生保や携帯を見直しても、特にストレスが増えるとは思えないが、食事のグレードを下げたり、好きな趣味が制限されるとストレスが貯まってしまい、節約継続にとって悪影響となる。

 このため、変動費の節約は、固定費の節約が軌道に乗った後で、挑戦するのが無難である。

ただ、比較的実行し易い項目としては、使っていないサブスクサービス・アプリの見直しが挙げられる。自分の知らないうちに不要な課金がなされている場合もあるかも知れないので、これはチェックした方がいいだろう。 

節約を始めるに際しての基本事項

 それでは、早速節約を始めようと思う前に、前提事項がある。

それは、節約に際しては、 

  • 収支の把握、
  • 家計簿或いはノートを使った記録

 2点が必要ということである。

50代のサラリーマンであれば、このようなことはわかっているかも知れないが、

奥さんが家計を管理している場合には、意外と①月々の収支を把握していない場合も少なくないかも知れない。

 もっとも、固定費の節約、例えば、住宅ローン、生命保険、携帯代金等については単体でも実行可能なので、このあたりは直ぐに検討開始が出来るだろう。

 ただ、変動費、食費、外食費、日用品費、交際費、娯楽費等については、継続的な記録・記帳が無いと効果がわからないので、家計簿とかノートを作って管理する必要がある。

 いずれにしても、節約のトータルの効果が見える化できたほうがモチベーションも上がるから、いずれにしても家計簿(アプリ含む)やノートは使った方がいいだろう。 

最後に ~まずは固定費の節約だけで月に1万円を浮かしてみよう~

 冒頭で述べた通り、定年のあるサラリーマンにとって、50代は定年後の老後資金捻出にとって重要な時期である。そのためには、月1万円でもいいので、まずは節約と積立投資を始めてみることである。

 節約にもいろいろ方法はあるが、固定費、特に、生命保険や携帯代金を見直すとそれだけで月に1万円くらいは何とかなりそうである。

 もちろん、人によって、やり易い項目とそうでない項目があるだろうから、まずは自分に合った方法を取捨選択して節約に取り組めばいいだろう。