58歳で早期退職した後の生活と課題

早期退職すると、どういう生活になるのか?

 私は50代の定年準備中のサラリーマンであり、正社員を退職した後に再雇用を選択するつもりはなく、こじんまりと「ひとり起業」をすることを考えている。

 但し、60歳までは正社員として働くつもりであり、早期退職をするつもりはない。しかし、潜在的には早く辞めたいと思っているのか、最近、早期退職したらどういう生活になるのか、また、どういう問題に直面するのかということに関心がある。 

そうした状況で、YouTubeを眺めていると、興味深い動画を発見したので、紹介したいと思う。

https://www.youtube.com/watch?v=EWNFpHRDaVQ&t=28s 

結論的には、早期退職後の生活とか課題は、一般的に言われる定年後の生活や課題と共通している。この点は、楠木新さんの名著「定年後」で書かれている通りである。 

しかし、このYouTube動画を通じて具体的なケースとして見てみると、非常にリアリティがあり、共感できるところも多く非常に参考になった。 

58歳で早期退職した動画について 

早期退職の経緯 

早期退職の場合、気になるのは早期退職に踏み切った経緯である。サラリーマンが60歳の定年前に会社を辞めると、安定的な給与収入を失い、退職金や年金受給額も減り、肩書や自分の居場所を失うこととなる。このような大きなデメリットが生じるのは承知の上で、あえて早期退職に踏み切るには、それなりの理由があるはずである。 

このYouTubeの運営者の場合は、自分が在籍していた部署が急遽廃止になり、他の部署へ異動することになったのがきっかけだそうだ。新しい部署には馴染めず、やりがいを失ったところ、一気に働き続ける意欲が失せたところ、たまたま早期退職の話があったので、それに乗っかったのだという。 

早期退職と言っても、50代前半で退職するのと、58歳ではかなり大きな違いがあり、早期退職による割増退職金があると、経済的には60歳までの定年まで働く場合と比べて経済的なロスは特に無いかも知れない。ただ、その場合は、再雇用の機会を失うことをどう考えるかとか、退職後の仕事をどうするのかといったことが課題になるだろう。 

58歳での早期退職から2年間の感想 

このYouTube動画の運営者は現在60歳ということで、早期退職してから2年が経過している。当然、早期退職した最初の2週間、半年後、2年経過時と、時期によって感じ方は違っている。 

詳しくは、15分程度なので、動画を見てもらえばいいのだが、私なりに感じたことをまとめると、以下の通りである。 

退職後の最初の2週間は、朝起きる時点で、出勤しなくていいという嬉しさに浸れる。このあたりは、楠木新さんの「定年後」で書かれている通り、多くの退職者が共通して感じるところである。 

しかし、「会社に行かなくていい」、「とにかく自由」という嬉しさも徐々に減って行く。早い人は2週間位から、遅い人でも6か月も経つと、当初の嬉しさが「退屈」に感じてくるらしい。このYouTube動画の運営者の場合は、6か月後位も、公園の木々の緑の美しさ、鳥の鳴き声、日差しや風を、現役時代よりも感じることができたということで、「退職の嬉しさ」は長期間継続した方だと思われる。 

この方の場合、バイクやキャンプが趣味なので、いろいろなところにツーリングに出かけて、旅行している時は非常に幸福感を得られたそうだ。 

ただ、この方の場合は退職後はバイト等の仕事も一切していなかったこともあり、次第に、「いい大人が平日ぷらぷらしていていいのか?」、「ゴミ出しとかをしている時、近所の人から『この人何やってるんだろう?』と思われたりしないか?」と感じるようになったという。勿論、この方自身も、そんなのは自分の思い込みに過ぎないとは認識していたそうだが、それでも、働かない後ろめたさの様なものもあり、つくづく自分は仕事人間だったと感じたという。 

この点は、長年サラリーマンをやっていると誰でも感じることではないだろうか?私も、堂々と有給休暇を取っていても、平日の昼間に近所を歩いていると、何となく罪悪感を感じたりすることがある。私と同世代のサラリーマンの中にも、余暇の過ごし方とかが苦手な人は結構いるかも知れない。定年後は、そういう意識を持ちたくないので、私は50代の間に定年準備の一環として、休日の過ごし方を改めようと感じているのだが、まだまだ切り替えが出来ていない。 

やっぱり、悩みごと、課題は「お金」や「仕事」に関するものが多い 

長年サラリーマンをしてきた人間が、会社を辞めて感じる悩みや不安は、やはり「お金」とか「仕事」絡みが多いようだ。 

このYouTube動画の方が最初に感じたお金絡みの課題は、会社を辞めると健康保険代が高くなるということである。国民健保の場合、前年度の年収が社会保険代の基準となるので、退職前にいた会社の健保を任意継続する方が安いという。ただ、会社は半分負担してくれななくなるので、健康保険料の負担が増えたという。退職後、健康保険と住民税に要注意という話は、こちらの過去記事にまとめたので、ご興味ある方は御一読下さい。

https://retirefphb.com/archives/265 

それから、これはお金の問題では無いが、健康保険に係る手続等も全部自分でやらないといけなくなるので、こういった面倒臭さも感じることになった。 

この方の場合、60歳の正社員としての定年よりも2年ほど早く辞めたのであるが、他に仕事をしていないので、58歳の早期退職から現在まで、基本的に貯蓄の取り崩しで生活をしているという。そうなると、よく聞く話であるが、じわじわと貯蓄が減って行くプレッシャーが感じられるという。 

そうなると、アルバイトでも自営業でも何でもいいので、再度仕事を始めればいいのだが、せっかく早期退職したのに、今更やりたくなり仕事はやりたくないという。他方、60歳前後になると、人手不足と言われる飲食店系バイトでも好きなものを選べる立場じゃないそうだ。また、ブログ、YouTubeSNS等で稼げる人は一部の人に過ぎない。したがって、納得の行かない仕事はやりたくないという気持ちと、選り好みしているとそもそも仕事が見つからないというジレンマに陥ってしまう。これもよく聞く話であるので、そのあたりはどうするのか定年準備の段階から考えておきたいところである。 

また、この方が言っていたのは、クレジットカードは現役サラリーマンのうちに12枚余分に作っておいた方がいいという。というのは、会社を辞めて無職になってしまうと、クレジットカードの審査が通らないという。クレジットカードの有効期限到来で再審査になった場合、無職だと審査に跳ねられるリスクがあるらしい。このあたりも、会社を辞めて無職になってしまう場合の問題点と言えよう。 

この動画は、リアリティがあり非常に興味深く見ることが出来た。ただ、多くの定年後を扱った本で指摘されている課題がその通り生じているので、定年後に備えて準備をすべき50代のサラリーマンは、定年に関する本を何冊か読んでみて、早めに対応をするのが良いかと思う。