1. 「ゆとりある老後生活費」、38万円で本当に大丈夫なのか?
ゆとりのある生活をするための老後資金は、いくらぐらいあれば足りるのか?
この点、金融業界とかFPの世界では割と有名な、生命保険文化センターの統計がある。
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1141.html
これによると、平均37.9万円とあり、悪い金融機関やFPは、この数字を基に計算を行い、ゆとりある老後のためには、あと「○千万円」必要ですと投資を煽るのである。
ただ、これはよく見て、よく考えると、非常にツッコミどころの多い統計である。
例えば、22.5%もの多くの人が「わからない」と答えているし、18%もの人が「50万円以上」と答えている。「50万円以上」って、「60万」?、「70万」?、それとも「100万以上」?
そもそも、ゆとりある老後生活費がいくらぐらいかというのを知りたいのは、回答者側である一般人なので、知りたい人達に質問して何の意味があるのという感じである?
2. ただ、ゆとり資金を何に使いたいかという点は興味深い
この37.9万円という数字はどれだけ当てになるのかは別として、「老後のゆとりのための上乗せ額の使途」は興味深い。
「旅行やレジャー」がトップであり、「日常生活費の充実」、「趣味や教養」、「身内とのつきあい」が上位である。
これを見ると、老後のゆとり資金は「旅行」に充てたいのだなあということが再認識できる。
そして、意外感があったのは、「趣味や教養」である。「教養」なんて、図書館、ネットで無料の情報は多いし、本もブックオフやメルカリを使うとそれほどお金はかからない。定年後に大学や大学院に通って、勉強や研究に新たな生きがいを見出す人がいるという話は聞いたことがあるが、少数派ではないだろうか?
それから、「身内とのつきあい」というのも、それほどお金がかかるのだろうか?
「子供や孫に対する資金援助」かと思ったが、これは別項目にあるので該当しない。それでは、一体これは何なのだろうか?故郷を離れて、都心で働いていたサラリーマンが、定年後に親戚づきあいとか、それほど積極的にするものなのだろうか?
また、気になったのが「日常生活費の充実」という項目である。
日常生活費と、ゆとり資金とは別にしないとメリハリの無い生活になってしまう気がするが、このあたりは内訳がわからないと何とも言えない。日常生活費のうち、切り詰めることが辛いのは、食費なのか、被服費なのか、日用品費なのか、通信費なのか、医療費なのか、そのあたりが気になるところである。
3. ゆとりある生活費がいくらかについては、現役時代の生活費が重要
ゆとりある生活費がいくらかについては、地域、家族構成、ライフスタイル等によって、人それぞれなのだろうが、その際に参考になるのは、現役時代の生活費なのではないだろうか?
この点、「70%ルール」というのがあって、定年後の生活費は現役時代の生活費の70%位あれば何とかなるという話である。
とは言え、これは結構ハードルが高い。
大都市圏で暮らしている大企業の管理職であれば、月の生活費が50万円以上でも不思議ではない。そうすると、老後の月々の生活費が50万円×70%=35万円とすると、到底年金だけでは足りないので、頑張って、アルバイトでも「ひとり起業」である程度稼いだり、資産収益等の助けが必要となる。
ただ、定年後に、アルバイト、資産収益等を合わせて月に10万円程度を得られるようにするのは、50代から準備をすれば、それほど無理なことはないと思う。
4. ゆとりある生活を送るには、50代のうちに対応が必要
定年後に、ゆとりのある生活をしたければ、定年後にもある程度の収入を得る計画と、資産形成が必要になる。定年直前になってドタバタしても間に合わない。
まずは、現在の生活費に70%を掛けて、その金額で定年後に十分生活していけそうか、試算してみることである。ただ、定年後にトータルで現役時代の70%以上の収入を得ることはかなりハードルが高いので、現実的には70%以内に収める方法(要は節約)を考える必要がある。
その上で、退職金や相続で得られる金融資産に加えて、いくらぐらい金融資産なのかを試算する必要がある。
とは言え、きっちりと上記のことをやっている50代サラリーマンは少数派かも知れない。
しかし、私の周りを見ると、一部のやっているサラリーマンは非常に熱心にやっている。この点は、かなりの格差がありそうだ。
そういうわけで、同じ会社で同じような給料をもらっていても、定年後の生活水準はかなり違ってくる可能性がある。これって、真面目に定年準備をしている人ほど、同僚には言わないでこっそりやっていたりするので、表面的に周りを見て、「何とかなるだろう」と楽観的にならない方がいいかも知れない。
とりあえずは、本屋で定年に向けた資産運用の本ぐらいは買ってみてはどうだろうか?