意外と「億り人」は身近にいる?
NRIの調査によると、純金融資産保有額が1億円以上の「富裕層」と「超富裕層」とを合わせると148.5万世帯になるという。
https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/20230301_1.html
全世帯数における「富裕層」と「超富裕層」とを合わせた世帯の比率は約2.7%で、約37世帯に1世帯が、純金融資産1億円以上を保有しているということになる。
私の様な50代の世代の場合、小学校のクラスに1人位が該当するというイメージであろうか?東京に限定すると、この割合はもっと高くなるはずである。
また、個人投資家の事情に詳しい経済コラムニストの大江英樹さんの「となりの億り人 サラリーマンでも「資産1億円」」を読むと、ずっと会社勤めで驚くような額の資産を築いた人も結構いるという。
https://publications.asahi.com/product/23306.html
こういったことを踏まえると、思っている以上に多くの「億り人」達が身近にいそうである。
サラリーマンが定年準備の過程で1億円を貯めることが出来ると、人生は変わるか?
これは非常に羨ましい話なのだが、私の友人の50代サラリーマンでも既に「億り人」になった者がいる。彼は昔から派手な贅沢をしない堅実なタイプで、40代後半位から老後資金を貯め始めていたようなタイプである。その彼が、去年、相続によって「億り人」になってしまった。
ところが、彼によると、「億り人」と言っても、ギリギリ1億円を超えたレベルだと人生は大きく変わるわけではないと言う。
まず、全額を運用に回せるわけではない
「億り人」になっても人生が変わらないという理由の1つが、そもそも金融資産の全額を運用に回せることは通常できないからということである。
例えば、金融資産がギリギリ1億円の場合、住宅ローンの残り、子供の教育費、老後資金といったお金をキープする必要があるので、運用に回せる割合はせいぜい半分か、MAXで7割位ではないかということだ。
1億円あっても、5千万か、少なくとも3千万円は元本割れの無い預貯金や個人向け国債で持っておきたいということである。
そうすると、投資に回せる原資は5千万から7千万円ということになる。
まあ、そういう堅実なタイプだからこそ、相続というイベントもあったが、きっちりと1億円を貯めることが出来たわけである。
運用する部分も再投資型がメインだと、利子や配当を享受できない
さらに、彼が言うには、その運用可能な5千万円~7千万円の部分も、複利効果を重視して、利子や配当を再投資するタイプのファンドを選ぶと、利子や配当というキャッシュフローは別途受け取ることができないことになる。
仮に、5千万円を分配型のファンド、或いは現物株、債券に投資をした場合、利回りをFIREで用いる4%とすると、年に200万円、税引後だと約160万円を手にすることができる。
しかし、それだと、ひと月当たりの手取り額は13万円強である。
家族構成によってそのインパクトは異なるが、彼によると、その分は教育費(留学費用)に回しがちらしい。そうなると、特に大した贅沢はできないのだと言う。
もちろん、ちょっと贅沢な外食、家具の買い替え、パソコンの買い替え、国内旅行等に使えて嬉しいことは間違いないが、ポルシェやベンツ、或いは、ロレックスを買うほどの余裕は生じないということだ。
「億り人」と言っても、いろいろ。2億だとまた違う
ただ、彼によると、「億り人」と言ってもいろいろあり、1億ちょっとだとこんなもんだが、これが2億円だと、ちょっと違って来るという。
どういうことかというと、住宅ローンの残り、教育費、老後資金と言ったお金は、金融資産が倍になっても大きく変わるわけではない。そうすると、金融資産の増加割合以上に、投資や支出に回せる金額は大きくなる。
例えば、金融資産が2億円あり、預貯金や個人向け国債でキープする金額が5千万円とすると、投資に回せる金額は1億5千万円となる。この場合、1億円を利子・配当が受け取れる金融商品に投資をし、想定利回りを先ほどの4%とすると、年間で額面400万、手取りで約320万円を受け取れることになる。
そうなると、約26万7千円を月々受け取れることになり、これだと流石にかなりインパクトがある。そして、彼が言うには、「2億円あるとしたら、2千万円くらいを消費に回して、残りの1億円3千万円を運用するのも面白い。最初に、ベンツ、ロレックス、海外旅行という贅沢をして、それとは別に、毎月20万円位が受け取れるように運用すると満足感が高い。」
やはり2億円の金融資産となると、人生が変わるとまでは言えなくても(サラリーマンを辞めて、運用だけで今まで以上の説活ができるには足りないから)、かなり余裕を持った生活を送れるようになると言えよう。
しかし、「億り人」という満足感・達成感・心のゆとりという効果は軽視すべきでない
しかし、彼は、「1億円ちょっとの『億り人』だと、人生を変えるほどのインパクトは無いかも知れないが、『億り人』になれたという満足感・達成感は決して小さくはない。また、現役サラリーマンの場合、まだ定年まで継続して安定的なキャッシュフローが得られる上、退職金や企業年金もある。このため、それとは別に1億円があると思うと心の余裕が生まれ、非常に日々安心感を持てるようになった。」と言う。
「億り人」になるということは、物質的なインパクトとは別の、心理的な満足度が得られるという意味で非常に良いものだそうだ。
地価や株価の高騰により、資産売却や相続によって、純金融資産1億円を達成できそうな「億り人」予備軍のサラリーマンは結構身近にいるかも知れない。そういう人達は、それをモチベーションにして、貯蓄を頑張ってみるのは悪くないかも知れない。